世界の物語

□第2話「記憶喪失」
4ページ/4ページ





カノンノ「え…」


チャット「…それは、本気で言ってるんですか?」



リィアナ「うん」




リィアナは頷く。

あまりにも普通の表情で頷くものだから、三人は素直に驚く。

嘘をついてるようにも見えない。





チャット「…どうやら自分の名前以外本当に記憶が無いと思います………ふむ、落下した時のショックですかね」



カノンノ「記憶が…?」






「記憶がない」という部分にカノンノは反応して、リィアナを見るその瞳が変わる。


今までやりとりを見ていたパニールがチャットの顔を見ながら口を開く。





パニール「それじゃ、この子ここにいてもいいんじゃないんでしょうか、船長さん?見知らぬところに置いていくのは可哀想だわ…」



カノンノ「!」





パニールの提案にカノンノは驚き、そしてチャットを見た。





チャット「ええ、構いませんよ」






即答。


意外にも簡単に了承がもらえたことに2人もびっくりするもチャットはつかさず付け足す。





チャット「ただし」


「?」


チャット「働かざるもの食うべからずです。ボクの子分として立派に働いて頂くことが条件ですけどね」


カノンノ「チャット…!!」





この上ない笑顔のチャットにカノンノとパニールは喜ぶ。

パイレーツハットを被り直して立ち上がり、チャットはリィアナに手を差し出す。





チャット「これよりバンエルティア号の一員としてあなたを迎えます」


リィアナ「えっと、仲間になる、ということ?」





話がぽんぽんと勝手に進み、自分はこの船にいてもいいということに理解するまで時間がかかった。


自分でも何者かよくわかってないのにこの船の所有者らしいこの女の子は構わないのだと。




一向に手を差し出してこないリィアナにチャットは更にずいっと手を伸ばす。





チャット「帰るところがない人を放り出すような真似なんてしません。ーーーーーー


諦めてください、もう貴方はボクたちの仲間ですよ」





そう言って笑顔を見せるチャット。
強制的な言葉のはずなのに全くそれを感じさせない優しい声色。



リィアナは自然と差し出された小さな手を握り返した。






















第2話・終
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ