Parallel
□Mr.プリンセスF
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「はい、それじゃあ今のところもう1回いくわよ〜!!」
「は、はい!!」
流れてくるのは優雅なワルツ。
城の姫たる者、それに合わせて優雅に踊りたいところではあるがはじめっからそううまくはいかない。
ツナはぎこちないステップでたどたどしく手足を動かしている。
「ちょっとちょっと、そこは前に進むんじゃなくて半歩後ろに下がるのよ!」
「は、はい!すみませんっ」
(もーっっ!!オレに踊るなんて無理無理!!!)
第7話 接近
数時間前、朝食にて。
「え?誕生パーティ?」
「そうだぞ、お前自分の誕生日を忘れてたのか?」
ボンゴレ城主・リボーンは半ば呆れ顔で言ったが、何かを思い出したようにコホンと咳払いをして表情を真顔に戻す。
「まぁ近頃色々あったからな。忘れていても無理はないか」
「ええ…まぁ…」
「まぁいい。とりあえず1週間後のお前の誕生日に執り行うからな、覚えておけ」
「はい…」
(でも誕生日パーティって何するんだろ…)
その想いが伝わったかのように、王子・ディーノの部下の1人、ロマーリオが小冊子をテーブルの上に置いた。
「姫、こちらが当日のスケジュールです」
「あ、ありがとうございます…」
ツナはパラパラとその冊子をめくって当日の流れを確認した。
(えっと…午前中に式典があって、そのままお昼は立食形式でパーティ、夜は…ぶ、ぶ、舞踏会!?)
「あ、あの…舞踏会って…」
「ダンスパーティだぞ」
(いや、それはわかってるのだけども…)
「あぁ、お前は久しぶりだったな。でも練習なら講師を呼ぶから心配ないぞ」
「は、はぁ…」
そういうわけで、今こうして練習をしているのである。
「はいそこでターン」
「はいっ」
手拍子しながら楽しそうに指導するのはヴァリアーと呼ばれるボンゴレ城の傘下で、イタリア本土で活動している部隊の一員、ルッスーリア。
オカマ口調の陽気な男で、自身は格闘技の達人でもあるのだとか。
(そういえば京子姫が最後にうちに来たのって、ダンスパーティ用のドレスの受け取りだったな…これのためのだったのかぁ)
すっかり踊りつかれたツナは音楽が鳴り止むと共にその場にすわりこんだ。
「はい、じゃあ今日はここまでにしましょ!続きはまた明日ね」
「あ、ありがとうございました…」
「しばらくぶりだから体がついていかないかもしれないけど、パーティは1週間後なんだからこの後もしっかり復習しておいてちょうだいね!」
「は、はい…」
(できるようになるのかなぁ…オレ)
はぁ、とツナは大きなため息をつく。
不安な気持ちを感じ取ったのか、ルッスーリアはあらあらどうしたらいいかしらと考え込んだが、ふと名案を思いついてポンと手を叩いた。
「?」
「そうそう、アナタの騎士様に教わるといいわ。彼、とっても上手なのよ〜!」
「そうなんですか!?」
(なんとパーフェクトな…)
剣術も凄腕で、ダンスもできようとは。
(でも確かに、優雅に踊ってそうだし、リードもうまそう…)
ぽやーんと山本にリードされながら踊る図を想像し、ほんのりと顔を赤く染める。
「アラヤダ、騎士様じゃなくて王子様かしら?アナタにとっては」
表情を読まれたのかニヤニヤしながら言われ、ツナは顔から火を噴いた。
「ち、違います!!!そ、そんなんじゃ…」
「アラアラ照れちゃって。かわいいわねぇ〜!」
「で、ですから…」
しかしルッスーリアはツナの話には耳を貸さず、ウフフと笑いながらレッスン部屋を後にする。
(もー…人の気も知らないで…)
赤みの引かない顔で、また大きなため息をついた。
(山本に教われって言われてもなぁ…)
最近意識しすぎてしまって、どうにも普通に接することができずにいる。
手取り足取りで教わるのならかなり接近することなるが、果たしてちゃんと教わることができるのか、とても不安であった。
(てか、女装のうえにホモって酷すぎるだろ、オレ…)
のしかかる事実と不安に、ツナは頭を抱えた。