Long

□キラメキフレーバーF
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「それじゃあ小テストの答案返すぞーっ」

いつものことだがツナは憂鬱な気分になる。
30点未満の者は居残り補習をさせられるのだが、ほぼ毎回引っ掛かるからだ。

(あぁ、やだなぁ…)

「沢田ーっ」
「は、はい」

どうせ補習だよ、と思いながら答案を受け取りにいく。
しかし点数欄を見ると、そこに書かれていた数字は30。

(補習じゃ、ない…!)

「ちゃんと復習はしとけよ」

教師は苦笑いで言った。
はぁい、と答えて席に戻ろうとすると山本に声をかけられた。

「ツナ、どうだった?」
「ギリギリ30!」
「おっ、やったじゃん!!」

山本は思わずツナの頭をわしゃわしゃと撫でようとしたが、慌てて手を引っ込める。



どきどきどきどき

(あっぶねぇ…いつもの癖で、つい。つーかオレ、今までよくこんなことできたよなぁ…)

思い返せば頭撫でたり、肩組んだり、抱き着いたりとか、日常茶飯事だったのだ。
しかし、ツナに恋愛感情を抱いてしまった今は、とてもじゃないができない。

(こないだはつい、手握っちまったけど…)

数日前の記憶が呼び起こされ、体がかーっと熱くなる。

「山本ーっ」

教師が呼ぶ声にはっとし、慌てて受け取りに行った。

一方のツナは、最近そんな彼のスキンシップがないことを少し残念に感じていたりなんかして。

(いつもなら、補習逃れるとよくやったなーって言って撫でてくれるのに…って、されたらされたで心臓もたないだろっっ)

山本を見ると、よっしゃ!とガッツポーズをしている。
そんな点数で喜ぶんじゃない!などと、これまた教師に苦笑いされている。
どうやら山本もギリギリで補習を免れたらしい。

こちらの視線に気付くと、山本はニカっと笑ってピースを作った。
それを見てツナも笑い返す。

((し、自然だったかな、今の))

2人ともドキドキが止まらない。

クラスの連中は自分の小テストの結果のことで頭がいっぱいになっていて、そんな2人の様子など気にも留めていなかった。
しかし1人だけ、その様子に今にも血管がぷちっと音を立てて切れそうになっている者がいた。
獄寺だ。

あれから数日様子をみていたのだが、間違いなく2人はお互いに惚れている。
初めは黙って見ていようかと思ったが、2人の毎日のこんな様子にだんだんとイライラしてきた。

獄寺はこそっとツナに声をかける。

「十代目、次の休み時間にお聞きしたいことがあるんですけど、いいですか?」
「いいけど…何?」

休み時間、2人は屋上にいた。
授業中どう話そうか考えていたが、回りくどいのもなんだと思い、獄寺は直球で尋ねた。

「…野球バカのどこがお気に召したんですか?」
「んなっ!!」

ツナの顔が一瞬で真っ赤に染まる。

「な、な、な、んでっ」
「…見てればわかりますって」

隠せてるおつもりだったんですか、と思いつつ獄寺はため息をつく。

「や、山本には、絶対、言わないで!」
「………」
「オレも、なんでこんなことになったかわかんなくて。どこが好きだとか、聞かれてもうまく言えないんだけど…」
「けど、好きなんですね?アイツのことが」
「………」

ツナは赤い顔でコクンと頷いた。

「男なのに、変だよね」
「山本は、10代目のお気持ちを知っても、そんな風には思わないと思いますよ」
「そうかもしれないけど、友達ですらいられなくなるのだけは絶対に嫌なんだ」
「………」
「だから、オレが頑張って隠し通すしかないんだよ」

獄寺はそれ以上何も言えなかった。
「山本も10代目のことが好きなんですよ」と言ったところで、ツナは信じないだろうし、何より人づてに聞いたって嬉しくないだろう。

(そうは言っても、全く隠しきれてねぇんだよなぁ…)

ツナも、山本も。
お互いが気付かなくても、あの不審行動ではそのうち周りが気付く。
両想いなのは明らかなのだから、周りが気づいて囃し立てる前にどうにかした方がいいと思う。
が、少なくともツナは性格や、先程の話から考えても自分から踏み込んでいくなど考えられない。
かといって山本から告白するようけしかけるのもしゃくである。

(10代目もあんな野球バカのどこがいいのやら…)

そんなことを考えながら廊下を歩いているとばったりと山本に出会った。

「よぉ獄寺!」
「………」

獄寺は山本をキッと睨みつけた。



「何だ?、獄寺」
「………」

いくら敬愛するツナのためとはいえ、獄寺は山本にアドバイスができるような人間ではなかった。
むしろ憎まれ口の1つでも叩いてやりたい。

「…この鈍感っ」
「へ?」

(あぁくそ、ホントにイラつくっ)

ツナには幸せでいてほしい、けれど山本が今以上にひっつくことになると思うと腹が立つ。
ジレンマに陥る獄寺なのであった。

(よりによって、なんで、あいつなんですか10代目〜っっ)
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