Long

□キラメキフレーバー5.5
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部活から帰って、自分の部屋のベッドに横になる。
考えるのは、あの子のコトばかり。

(オレ、ツナに恋しちまった)

ダメツナ呼ばわりされてるけど、何かとすげぇヤツで、命の恩人でもある。
普段は何か放っておけなくて、つい構ってやりたくなる。
何より、一緒にいて心地のいい親友だった…のだけれど。

自分でも驚くほど、欲が出てしまったのだ。
もっと頼りにされたい、もっとそばにいさせてほしい…ツナのことを、ひとりじめしたい。

(オレは別に、好きになったヤツが男でも構わねぇけど…)

山本にとって想いを寄せる相手が同性であることは大して問題ではないらしい。
それよりも―――

(ツナは、笹川のことが好きなんだよなぁ…)

悔しいけれど、お似合いだと思う。
第一、女の子相手じゃかないっこない。
その一方で、オレにしとけよ、とも思う。

もし、ツナが知ったら、どんな顔をするのだろう。
ツナは優しくて、押しに弱くて断るのが苦手だから、強引に押せば受け入れてくれるかもしれない。
けれどそこにつけこむようなことは絶対にしたくない。
いっそ離れてくれた方がいい。
だけど友達ですらいられなくなるのは耐えられない。
結局のところ、バレないように頑張って努力するしかない。

(ツナ、今何してっかなー)

会いたい。
今日も学校で会ったし、明日も学校で会えるけれど。
せめて声だけでも聞きたい。

思わず自分の部屋を出て、電話の受話器を持ってツナん家に電話をかけていた。
何度かのコール音の後、ガチャっと電話をとる音がした。

「はい、沢田です」
「ツ、ツナか??や、山本だけど」
「山本!?」

聞きたかった声が電話越しに聞こえる。
声が聞ける、ただそれだけで胸が高鳴る。

「どしたの?急に」
「あ、えっとな・・・その」

(しまった、何も考えずかけちまったから・・・)

用もないのにかけたと知られたら不審に思われてしまう!!
考えろ、何か考えるんだ。

「えっと・・・足、まだ痛むか?」
「うん、昨日よりはだいぶひいた気がするけど」
「そっか・・・あの、明日、迎えに行こうか?おぶってく、ぜ」
「えっ!?いいよ、山本に悪いし」
「イヤか?」
「イヤじゃないけど・・・昨日今日ずっとおぶってもらったし・・・」
「オレのことは気にすんな。したくてしてるんだからさ。・・・まぁ・・・その・・・朝練あっから、すげぇ早くなっちまうけど・・・それでもよければの話、なんだけど。イヤならやめとく・・・けど」

強引なんだか下手に出てんのかわからない誘いだが、山本もいっぱいいっぱいだった。

(あぁ、オレなんかしつこすぎ?さすがに嫌がられちまうかなぁ・・・)

「・・・じゃ、じゃあ・・・お願い、しようかな」
「ホントか!?」

嬉しい、めちゃくちゃ嬉しい。

「早起きさせちまうけど、いいか?」
「いいよ。どうせ1人で跳ねて行くにしても早起きしなきゃいけないし」
「そ、そっか。じゃ、じゃあ今朝ぐらいの時間に行くから」
「わかった」
「それじゃ、また・・・」
「や、山本!!」
「ん?」
「ホントに、ありがと・・・助かる、よ」
「っ・・・どういたしまして」
「それじゃ、また明日」
「おう!!」

ガチャン

受話器を置くなり、山本はその場にヘナヘナと座り込んだ。

(ヤベェなぁ、オレ)



顔は紅潮しきっており、心臓はドキドキ、頭はすっかり舞い上がってしまっている。
この恋心を隠すことが、果たして自分にできるのだろうか。

(明日ツナに会って大丈夫か?オレ)

自信なんてどこにもない。
けれど今はただ、喜びをかみしめていたかった。
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