ーBOOKー

□八尺様
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目に入ったのは白っぽいワンピース。
それが車に合わせて移動していた。
あの大股でついてきているのか。頭はウィンドウの外にあって見えない。
しかし、車内を覗き込もうとしたのか、頭を下げる仕草を始めた。

無意識に「ヒッ」と声を出す。
「見るな」と隣で声を荒げる。

慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握りしめた。











コツ、コツ、コツ

















ガラスを叩く音が始まる。
周りに乗っている人も短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。
アレは見えなくても、音は聞こえるようだ。
Kさんは「もう大丈夫と思うがな、念のためしばらくの間はもっていなさい」と新しいお札をくれた。



その後は親父と二人で自宅へ戻った。
バイクは後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。
親父も八尺様のことは知っていたようで、子供の頃、友達のひとりが魅入られて命を落としたということを話してくれた。
魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。


バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係ある人で、つまりは極々薄いながらも自分と血縁関係にある人だそうだ。
前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も突然血のつながりはあるわけで、少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのような事をしたという。
親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、血縁は薄くてもすぐに集まれる人に来てもらったようだ。


それでも流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、また夜より昼の方が安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。

道中、最悪ならじいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。






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