ーBOOKー
□八尺様
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テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。
部屋に閉じ込められるときにおばあちゃんがくれたおにぎりやお菓子も食べる気が全く起こらず、放置したまま布団に包まってひたすらガクブルしていた。
そんな状態でもいつのまにか眠っていたようで、目が覚めた時には、何だか忘れたが深夜番組が映っていて、自分の時計をみたら、午前一時過ぎだった。(この頃は携帯を持っていなかった。)
なんか嫌な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえた。
小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。
風のせいでそんな音がでているのか、誰かが本当に叩いているのかは判断がつかなかったが、必死に風のせいだ、と思い込もうとした。
落ち着こうとお茶を一口飲んだが、やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして、無理やりテレビを見ていた。
そんな時、じいちゃんの声が聞こえた。
「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ。」
思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。また声がする。
「どうした、こっちに来てもええぞ」
じいちゃんの声に限りなく似ているけど、あれはじいちゃんじゃない。
どうしてか分からんけど、そんな気がして、そしてそう思ったと同時に全身に鳥肌が立った。
ふと、隅の盛塩を見てみると、それは上の方が黒く変色していた。
一目散に仏像の前に座ると、お札を握りしめ「助けてください」と必死にお祈りをはじめた。
そのとき、
「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽ…」
あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。
そこまで背が高くないことは分かっていたが、アレが下から手を伸ばして窓ガラスを叩いている光景が浮かんで仕方なかった。
もうできることは仏像に祈ることだけだった。
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