ーBOOKー

□八尺様
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その後、「いつ見た」、「どこで見た」、「垣根よりどのくらい高かった」とじいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。
じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。
引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良くわからなかった。
ばあちゃんは心なしか震えているように見えた。

じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると、「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけにはいかなくなった。」と言った。





─何かとんでもなく悪いことをしてしまったのだろうか。

と必死に考えたが、何も思い当たらない。
あの女だって、自分から見に行ったわけじゃなく、あちらから現れたわけだし。
そして「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行ってくる」
と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。

ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると、「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何も心配しなくていいから。」
と震えた声で言った。
それからばあちゃんは、じいちゃんが戻ってくるまでぽつりぽつりと話してくれた。



この辺りには「八尺様」という厄介なものがいる。
八尺様は大きな女の姿をしている。
名前の通り、八尺ほどの背丈があり、「ぼぼぼぼ」と男のような声で変な笑い方をする。


人によって喪服を着た若い女の人だったり留袖の老婆だったり、野良着姿の年増だったりと見え方が違うが、女性で異常に背が高いことと、頭に何かのせていること、それに気味悪い笑い声は共通している。

昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。
この地区(今は○市の一部であるが、昔は×村、今でいう「大字」にあたる区分)に地域によって封印されていて、よそへは行くことが無い。

八尺様に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。


最後に八尺様の被害が出たのは十五年ほど前







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