精霊の唄(怨霊編)

□五大霊能力巡礼の儀式・前編(全120ページ)
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翔太は………。

昨日の昼過ぎから、神無月神社という所で修業していた。


神無月神社は、巻物を貸してくれた原井の自宅だった。


原井の両親は、翔太を一目見るなり彼が霊能者だと見抜いた。


事情を話すと、原井の両親は30年前の煌蓮と擂駕の戦いを知っていたようで。


『煌蓮は、私達霊媒師や退魔師の間では有名なんだ。独自の流派で悪霊を打ち倒し、更に生きた人間の心をも癒せる神的な存在として尊敬されている』

『彼女の歌う唄は、五種類あるとされていますよ』

『五種類!?呪歌だけじゃないんだ!』


翔太が驚くと、原井の両親は話してくれた。


『その呪歌は“黄泉送り”と言い、黄泉の国から現世に現れた悪霊を、黄泉の国へ送る唄』

『“鎮魂歌”というものもありますよ。悪霊ではなく、死者の魂を天国へ運んでくれる唄なんです』

『“癒し童歌”というものもある。心身ともに疲れた人々の精神を癒してくれるんだ』


翔太は必死にメモを取る。


『“防塵歌”というものもあるんですよ。生きた人間達を悪しき霊から守る為の唄なんです』

『そして、煌蓮は…この唄だけは決して歌わなかった』

『それは……?』




『“破滅獄閻
”という破滅の歌だ。生きた人間の心を恐怖で埋め尽くす、呪いの唄だ』




『そんなものが、どうして存在しているんですか?』

『煌蓮に力を貸すと言って、騙した奴が詩を書いたんだ。擂駕が実際に復活して人間を殺し廻るまで、誰一人として煌蓮の霊能力や擂駕の存在を信じず…』

『もっと早く皆が煌蓮の声に耳を傾けていれば…被害は最小限に止まったかも知れません』

『まあ…今更何を言っても後の祭りだがね。ともかく、翔太君がこの五大霊能力巡礼の儀式を受ける目的は、2つだ』


翔太は息を飲んで、原井の両親を強い眼差しで見つめる。


『君は、煌蓮と同じく唄を歌い、擂駕と戦う。今は霊力を操る術を知らないでいるから、呪歌以外の唄を君が歌うと、生きた人間の心を癒す“癒し童歌”が発揮されてしまうんだ』

『そして、現世の唄を歌うだけでも霊力を使い、余計な悪霊までも除霊してしまっています』

『今言った破滅獄閻以外の唄を使い分けられるようになれば、人体への影響はなくなる。その為の修業が1つ』

『2つ目は、あなた自身の霊能力を向上させる為。霊力を溜める器を構成・拡大させ、人体の影響を更に無くすのです』


唄を使い分けるようになる
こと。

霊力を溜める器を作り、拡大させて霊力をより多く使えるようになる為。


五大霊能力巡礼の儀式を行う目的を理解し、翔太はメモに書き込んだ。
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