精霊の唄(怨霊編)
□天国と地獄(全133ページ)
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4月30日。
煌蓮の埋葬が終わり、久しぶりに自分の部屋で翔太は宿題をしていた。
今日は、亜里沙と在宅デートだ。
コンコン、と部屋のドアをノックされた。
「翔太、翔太。母ちゃん、これから取材旅行に出掛けるからね」
「あ、もう?体には気をつけろよ?」
「父ちゃんが一緒だから大丈夫さ。カードと現金はいつもの場所に置いて行くから、ちゃんと彼女をもてなすんだよ」
「分かってるよ…」
「じゃあね、行って来ま〜す♪」
「行ってらっしゃい」
義母親とは仲直りしたが、どうも父親とは上手くいかなかった。
長年離れていたのと…父親の不器用さが原因だ。
(いや、大事にされてんのは分かるんだけど…口下手だし、向こうも俺の扱いに困ってるみたいだ)
父親は、アパートを引き払って当初の予定通り、ここで住まうことにしたのだという。
お陰で、翔太は義母親を少なからず心配せずに外に遊びに行けると、内心喜んでいた。
この三連休中、仲間達に色んなことがあったようで…。
聆笥は、両親を許すことが出来そうにないからと言って、自ら進んで鎧鴉の住居で一人暮らしを始めた。
父親がアパートを引き払った時に、不必
要になったエアコンや炊飯器、テーブルやガスコンロ等を譲り受けて…。
携帯電話を解約して、英雄にお願いして新しい携帯電話を彼の名義で購入してもらったりと。
両親の手は一切借りずに、自立出来るまでは仕方なくそこで生きる為に、初めてのアルバイトに挑戦しているという。
元々、そこで暮らしていた鎧鴉は…。
両親によって、遠方の養護施設へと追いやられた。
一度だけ、翔太の携帯電話にメールが送られて来た。
“奴らの情報を盗み盗って、なおかつ奴らの目から逃れられたので有難いです。
情報を解凍するまで時間がかかりそうですが、必ず国際ネット研究機関に通報します。
どうか、兄のことを宜しくお願いします”
パソコンから送信されたものなので、翔太は聆笥に連絡先を教えてあげた。
今更、両親にバレようが関係はないと聆笥の押しの強さが功を成したのか、鎧鴉はツンケンしながらも返事を返してくれるという。
耕治は蘭花と映画を観に行って、食事をして…帰り道に少し休憩しようと立ち寄った夜の公園で。
“どうしてデートに誘おうと思ったのか訊いてみた(笑)”
“お前、鬼畜か!…それで?(爆)”
“顔を真っ赤にして、頑
張って言ってたさ。付き合ってほしいからだと”
“おー!!!!!北沢、よくやった!!!!!”
“いい雰囲気になったからキスしたら、失神してしまって。よっぽど男に免疫がないんだな(笑笑)”
“マジか!大丈夫なのかよ…”
“大丈夫は大丈夫だが…どうもまだ遠慮があるみたいでな。だから言ったんだ。俺は彼氏になったんだから、触り放題なんだぞ…と”
“やらしいなぁ…。で?”
“キスしたら、また失神した。早く慣れてくれないものかな(笑)”
…というようなことがあったのだと、先日の夜、翔太はそう耕治とやり取りをしていた。
(北沢、ガンバ…。耕治は何も言わないけど、間違いなくお前に惚れてんだから…)
宿題をしながら、そうエールを送った。