精霊の唄(怨霊編)
□理由(全95ページ)
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───吾川高校・教室。
もうすぐゴールデンウィークに入るので、生徒達は予定を聞き合い、賑やかだ。
「はよーッス」
「おはよう」
先に席に着いていた翔太が、登校して来た耕治に手をかざす。
「…あれっ?耕治。包帯は?」
「お陰様で、完治いたしました♪」
「Σはっやッ!!!!!もう!!!!!?」
「先生が相変わらず首を傾げていたな。君はエイリアンか!?と驚かれた」
「そりゃあ言うわ…。清水先生…哀れな…」
耕治は自分の席に着いて、教科書を机に入れた。
「ん?」
ガサッと何やら違和感を感じて教科書を引き抜く。
「どうした?」
「…アハハ。まだまだガキだな」
耕治は机から紙を取り出した。
「何だ?」
「めちゃめちゃ面白いことが書いてあるぞ。見るか?」
「見る見る!」
翔太は紙を受け取り…。
絶句した。
“しねばよかったのに”
バンッ!!!!!
翔太は机を叩き、クラスメートを見回した。
一部は驚いてこちらを見て、一部はクスクス笑いながら視線を反らした。
「…れだ
よ…」
「…………」
「こんなことする奴ぁ誰なんだよ!!!!!文句があんなら正々堂々表に出ろや!!!!!」
すると、気のいい男子…椎崎が歩み寄り、翔太が手にしている紙を奪い取った。
「…しねばよかったのに…!?悪質な冗談だな。笑えない」
「やれやれ…熱いなぁ♪」
耕治は足を机の下から出して、組む。
「これ書いた奴〜。死体の頭をひっ掴んだ話でも聞くか〜?」
「Σいやいや!!!!!やめろ!!!!!しっかしまぁ…どんだけ暇人なんだ?コレを仕掛けた奴」
椎崎は眉間に皺を寄せた。
「大野がカッコイイからって、ヒガミは良くないよなぁ」
翔太は紙を奪い取り、唇を震わせる。
「…ヨッシーが見たら…絶対に悲しむ」
「…だな。大野、気にすんなよな!」
「気にはしていないが…何処の時代にもいるもんなんだな。こういう遊びをする奴」
耕治はクスクス笑う。
「根性が気に入らないなぁ♪」
「Σ大野がキレてるッ!!!!!こりゃあ犯人は無事じゃあ済まないだろうな…」
そこへ、聆笥が登校して来た。
「おはようございます」
「おはよう!」
「おはよう」
「お…おはよう」
「…翔
太君…階段まで丸聞こえでしたよ?どうかしたんですか?」
「これが…耕治の机の中に…」
翔太が紙を見せると、聆笥は通学鞄を机に叩きつけた。
「な…な………!?」
「俺、だいたい怪しい奴分かるけど…言うか?」
椎崎が言った。
「椎崎は朝早いもんな。頼む」
「織谷に貸し1つ、合計2つ…と」
「…仕方ない」
椎崎はグループの一部を見つめた。
相変わらずクスクス笑いながら視線を反らしている。
「俺が教室に来た時には、あいつらしかいなかった」
山下。
田中。
都宮。
瀬川。
この四人だという。
「椎崎。そんなことを言って、君にも被害が及んだらどうする」
耕治は腕を組んで真剣な眼差しを向けた。
「だーいじょーぶ!お、そろそろ岡崎が来るな…。それ、ちゃんと渡せよ!」
椎崎は自分の席へ戻り、隣の席のグループ仲間である和島と照美旺に何やら囁く。
二人は、こちらを見て拳を突き出してきた。
「…やっつけてやれ…か」
「翔太君…よく分かりますね」
「慣れ、だ。そういやあ、まともに話したことはないな」
しかし、嫌な感じではないので、そういった機会が楽しみだったり。