精霊の唄(怨霊編)

□出会い(全77ページ)
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4月も終わりに近付いた。


キーンコーン…。


午前8時30分の予鈴が鳴った。

皆、新しいクラスにも段々と慣れてきて、男子や女子のグループが仕上がっていた。

翔太は改めてクラスを見回す。

気さくなのか、気難しいのか等、どんなグループなのか見分ける必要がある。


(ん?)


和気あいあいとクラスメートが談笑する中、一人だけグループを作らない男子がいた。

体が大きく、首筋にかかるほど髪が伸ばされており、顔は………分からない。

その男子は熱心に一限目の授業の予習をしているようだ。

横顔は、鼻が高いので美形だろうか。


「やあ、織谷、御伽裡」


蘭花が翔太の席へ赴いた。


「北沢、はよッス」

「おはようございます」

「おはよう…って…御伽裡さぁ。アタシにまで敬語は使わなくていいんだよ?」

「しかし…」

「北沢、俺が調教しとくから、あんまし突っ込んでやんなって」

「Σちょ………!?」

「アハハ!ちゃんと調教しておきなよ!?あ、そうだ。これ…」


蘭花は、妙に膨れた水色の綺麗な封筒を翔太に手渡した。


「お前…まさか…俺に気があんのか!?」

「Σ馬鹿言ってんじゃないよ!!!友達
に渡してくれって頼まれたんだ。それじゃあ!」

「えっ?おい?北沢!」


蘭花は廊下を出て行った。

彼女は、翔太とは昨年、同じクラスだったが今年は別のクラスに振り分けられたのだ。

翔太は手紙の封を切り、中身を取り出す。


「これ…俺のハンカチだ」

「そのようですね」

「一昨日、どっかに落としちまったままだったんだけど…」


封筒にはメモのような小さな手紙があった。

手紙を読む。


“   織谷君へ

一昨日、ポケットから落ちたのを見かけたんだけど…声を掛けられなくてごめんなさい。
せっかくなので洗っておきました”


「差出人がないな…。お礼を言いたいのに…」

「恥ずかしがり屋さんなのかも知れませんよ?取りあえず、廊下に出て叫んでみてはどうでしょう。ハンカチをありがとうと」

「頭ヤられてる奴だと思われること間違い無しだな…。北沢が頼まれたんだ。北沢に訊くさ」

「何だ。つまんないの」

「やれやれ…」


始業のチャイムが鳴った。

一限目は、数学。

英雄が担当だ。


「朝っぱらからテメェの授業かよ…」

「そう嬉しがるな(笑)」

「Σ誰が嬉しがるかッ!いっぺん脳みそ解体しやがれ!



ちょっとした笑いが起こる。


「はいはい。出席を取るぞー」


英雄は出席簿を開く。

あいうえお順に名前が呼ばれる。


「大野」

「はい」

「御伽裡」

「はい」

「織谷」

「はい」


翔太は驚いた。

あの、体の大きな男子は“大野”というらしい。

更に、同じ頭文字なのに驚いたのだ。


(大野…御伽裡…織谷…。スゲェ…連結じゃん)


出席を取り、英雄は授業を始める。

今日も相変わらずな日だと、翔太は少し退屈していた。
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