精霊の唄(怨霊編)

□敵視(全21ページ)
2ページ/21ページ

入学式が終わり、翔太と聆笥は新しいクラスとなった教室へ入った。


「良かった。同じクラスになれて」


聆笥がそう言い、安堵の溜め息を洩らす。


「大袈裟だなぁ。クラスが離れても付き合いは変わらないだろう?」

「翔太君…。本当に、そう思ってくれているのですか?」

「当たり前じゃん。今更何言ってんの?」

「…ありがとうございます…」

「席は何処にしよっか。窓際じゃない方がいいよな」


言いながら、翔太が離れた。


「御伽裡、御伽裡」


聆笥は自分を呼ぶ囁き声に振り向いた。

背後の廊下に見慣れた男性が立って手招きしているのだ。

聆笥は大人しく男性の向かい側に立つ。


「岡崎先生。ひょっとして、僕達のクラスの担任に…?」

「まあな。しかし…織谷も同じクラスだとはなぁ。予定外だ」


岡崎と呼ばれた男性は、一つ溜め息をついた。


「でも…ま、織谷が居れば安心は安心か」

「………」

「何かあったら、すぐに言うんだぞ」

「………」


聆笥が返事なくきびすを返した時、翔太が駆け寄って来た。


「岡崎じゃんッ!!!何?お前が担任なの!?」

「ああ、そうだ。お前の担任になるなんて…俺の一年間は終わったも同然だ」

「そりゃあこっちの台詞だっつーの!どんだけ暇人なんだよお前!」

「全く暇ではないんだがな…。ハァ…新学期早々、憂鬱だ」


…というやり取りをしているが、翔太も岡崎教諭も笑顔だ。


「まあ、宜しく頼むわ。去年よか全然、安心出来る」

「それは災難だったな。任せておけ。お前達は俺が守る」


岡崎教諭が教室へ入ると、生徒全員が速やかに席に着く。

翔太と聆笥も教壇の真ん前の席に、隣同士に着いた。
岡崎教諭は白墨で、黒板に名前を書いた。


「俺は、担任の岡崎英雄(おかざきひでよし)だ。数学を担当している。副担任は現在出張中の村上先生だ。宜しく頼む」


すると、ボソボソと話し声が…。


「副担は村上…?ヤバいんじゃないの…?」

「出張中だって言うけど…実は、生徒に暴力振るったからって教育指導を受け直してんでしょ…?」

「どうなるんだろ…」


次第に全員がボソボソ言い始めたので、英雄が手を叩いて黙るよう促す。


「大丈夫だ。お前達は俺が守る。何かあったら、すぐに言って来なさい」


英雄のその言葉で、大半の生徒が安心感を得たようだった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ