永遠の存在U
□迷子(全6ページ)
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誠之は子供の視線に合うよう、膝を折った。
「…お家が分からなくなっちゃったの…」
「迷子か。家は何処だ?」
「…綺沙良だよ…。ここ…どこ…?」
「綺沙良…聞いたことないな。ここは菅原だ」
「す…菅原…?!!ど…どうやって来たんだろ…」
「それは俺が訊きたい」
「…菅原…そうだ…。お兄ちゃん、駄目もとで訊くけど…この辺りに、学校の先生が住んでないかな…。すっごく高いマンションなんだけど…」
「そんなものは知らん」
「…そっか…」
「ふぅむ…参ったな」
誠之は立ち上がり、きびすを返した。
「取りあえず、来い。怪我もしているみたいだしな」
「う…うん…」
子供は誠之を警戒しながらも、一生懸命に小走りで付いて行く。
玄関を入り…。
「…光輝。いるか?」
誠之は手前の部屋のドアをノックする。
「ああ、お帰り」
「…子供を拾ったんだが…」
「へ?子供?誰の?」
「迷子らしい…」
光輝は慌てて部屋から出て来る。
「せ…誠之…。本当に迷子なのか…?」
「本人がそう言ったんだから…」
誠之は玄関に佇む子供を示す。
「…そ…そ
う…。おいで、腹は減ってない?」
初めは怯えていた子供だが、光輝の笑顔に安心した様子。
「怪我をしているな…。誠之、頼んだよ。俺は飯の支度するから」
言って、光輝は薬箱を誠之に手渡した。
「お…俺が…?」
「だって、誠之が拾ったんじゃないか。ちゃんと世話しなきゃね。ああ、手当ての前にお風呂にしなよ」
「…わ…分かった…」
誠之は慶太には逆らっても、光輝には逆らわない。
大人しく子供を風呂場へと促す。
「やれやれ…」
子供は傷口に湯を当てられても、眉をしかめて耐えていた。
さっぱりして、湯船に浸かる。
「ちゃんと10数えるんだぞ」
「はぁい。い〜ちぃ、にぃ〜い、さぁ〜ん」
しつけのなった子供だな…と、誠之は思った。