永遠の存在U

□黄金週間(全15ページ)
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清香は呆然と目の前にあった描きかけの絵を見つめた。


「すっごぉい…上手〜…」


「何だか恥ずかしいな…」


「ねえねえ、どうして絵描きさんになろうって思ったの?」


「…え…それは…」


一番困る質問だと、光輝は視線を反らした。


「ひょっとして…訊いちゃいけなかったのかな…」


「そういう訳じゃないよ。ただ…」


「ただ…?」


光輝は描きかけの絵に触れた。


「…気を悪くしたら、ごめん。俺は、うっすらとしか記憶にない…君のお母さんを思い出したかった。いつか、絵に収めて喜んでくれようと…描いている」


「あたしのお母さん?」


「ああ。ほとんど覚えてないけど…俺、いっつも甘えてた。父さんより、ずっと好きだった。本当の母さんかと疑ったくらいなんだよ」


「…あたしのお母さん…死んじゃったんです」


清香は申し訳なさそうにうつ向いた。


「…そっか。大変だったんだね」


「光輝さん?泣いてるんですか?」


清香は光輝の涙に気付いた。


「…ごめん。お母さんが死んで辛いのは…君達なのに…」


「光輝さん…。お母さんの為に泣いてくれて、ありがとうございます。お母さん…きっと喜んでくれています」


清香は微笑んだ。


「…ごめん…」


「お母さんは居ないから、もう絵に収めるのは無理だけど…」


清香は光輝の腕を揺する。


「あたし、お母さんと似てるんです。だから、あたしを絵に収めて下さい」


「…え…」


確かに、清香は昔のアルバムにあった彼女達の母親にそっくりだ。


「少しでも、光輝さんの夢が叶うように。だって、お母さんの為にそこまで泣いてくれたから…あたし、嬉しいんです」


「…でも…良いのか?不快な思いはしないか?」


「全然。お母さんの為に絵描きさんになった才能も、すっごく素敵ですもん」


「…ありがとう。じゃあ、やってみようかな。どれだけ似るか分からないけど…やれそうだ」


「頑張りましょう!」


光輝は早速、スケッチブックに描き始めた。
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