永遠の存在U
□北の国から(全14ページ)
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黒髪を一つに束ねた男性が玄関を入る。
「晃。利音達の代理で、慶太が来てくれたんだよ」
望月が慶太を示すと、男性は笑みを向けてきた。
「やあ。初めまして…かな。わざわざすまないね」
「いえ。話を聞かせて下さいよ。村川さん達、物凄く心配してるんですから」
「そう…」
男性…清水から途端に笑顔が失われた。
清水は腰掛け…一つ溜め息をつく。
夫婦は会話をしようとはしなかった。
「晃。結論を出すことなんてないだろう?どうして先走ろうとするんだ?」
望月が言った。
「それが日和の為だからですよ。日和は母親の方になついている。それなら、俺がいなくても大丈夫でしょう?」
「君は奥さんや子供を愛してはいないのか?」
「そんな訳ないじゃないですか。だからこそ言っているんですよ。俺が親元に戻れば、日和も気楽になれるでしょうしね」
日和とは、この夫婦の子供だろう。
そう考えた慶太は疑問を抱いた。
「何で小父さんがいなくなったら、子供が気楽になるんですか?普通…悲しむものなんじゃないかな」
「有り得ないよ。日和は女の子だからね。当然、俺にはなついていないんだ。これからも同じ女である母親の助けを必要とするだろうから、父親なんて必要ないんだよ」
「そうかな…。俺にはそうは思えない」
「君は我が家を知らないだろう?本当にそうなんだから。ともかく…」
清水は望月に向き直る。
「望月先生。俺は、話をこじらせたくないだけなんだ。ギスギスしたまま続けるより、よっぽど良いだろう?」
「晃…乙女葉とも、もっと話をしなさい。乙女葉は君や日和を愛してるんだぞ」
「…はっ、どうだか」
奥さんを示すと、清水は鼻で笑う。
「だいたい…里子さんに、こいつから先に別れたいと言ったそうじゃないか」
「そうなのか?乙女葉」
乙女葉は首を振った。
「私は…あなたのことを考えて、そうした方が良いのか相談していただけよ…」
「そうした方が良いと分かったから、俺を避けて日和にもそうしろと言ってあるんだろう?」
「違う…。私は…」
「言いたいことを俺に言わずに、どうして他人を巻き込むんだよ。里子さんに相談した時点でおかしいんじゃないのか?」
清水の剣幕に、慶太は内心…怯えていた。