永遠の存在U

□真紅の象徴(全12ページ)
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しばらく無言だったが…。


光輝は嫌に右手の甲がジクジクするのを感じた。


「…慶太…ひょっとして…怪我してる?」


「え?あ…本当だ」


さっき殴りつけた時に付いた傷だろうか。


手の甲…拳のその箇所から血が出ていた。


「な…何か薬…」


「いいよ。放っときゃあ治る」


慶太は傷を舐めながら歩く。


(…意志疎通も楽じゃないな…)


「悪かったな。俺、もうアイツらとは付き合わないって決めてたんだけど…」


「え…いや…別に気にしてないよ」


「そっか、良かった…。アイツら…何で居やがんだ…。全く…」


世間は意外と狭いと、慶太は溜め息をついた。


いよいよレッドステーションに着いた。


「ひゃあぁあ…でっかいなぁ…」


空を突く高層ビル…。


窓はキラキラと光り…。


見上げていると首が痛くなる。


「礼服着て来れば良かったな」


「そうだな。ああ…緊張する…」


玄関を通り、慶太が受け付け嬢に話し掛けた。


「会長と面会は可能でしょうか?」


「アポはお取りになられましたか?」


言われ…双子は顔を見合わせた。


慶太は頬を掻いて「当然だよな…」と困った。


「えっと…今取れば、いつ面会は叶うんですか?」


「そうですね…恐らく三年後になりますが」


「さ…三年…」


慶太は気力を使い果たし…その場に崩れる。


仕方なく光輝が受け付け嬢に言った。


「アポイントメントを取らせて下さい。三年後でも構わないので」


こうなったらヤケクソだ。


「承りました。こちらにご氏名と連絡先を明記して下さい」


光輝は言われた通りに記入し…。


「用件」の欄に「父親のことで、三山悟史について相談がある」と書いておいた。


双子が肩を落として立ち去る時。


玄関前に停まったリムジンから、真紅の長髪の男性が歩いて来た。


「凄いな…。目も真っ赤…」


「威厳もあるし…。偉い人なんだろうな…」


すると…信じられないことに、その男性は慶太の顔を見つめていた。


「え…」


「…いや…すまない。知り合いに似ていた気がしたんだが…。気を悪くしたなら申し訳ない」


「いえ…俺達こそ…。見事な髪と目ですね。驚いてしまって」


「誉め言葉として受け取っておくよ。では、失礼」


男性は笑みを向け玄関を入って行った。
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