精霊の唄(怨霊編)
□五大霊能力巡礼の儀式:中編(全181ページ)
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―――大阪市内、山中。
バスから降りた翔太達は、荷物を担いだ。
「はあ…。空気が冷たいね」
聆笥が吐いた息は白かった。
大阪も雨上がりのようで、山の中なので肌寒い。
クラスメートの中でもカップル成立を果たしている福島と三山木は、お互いに体を寄せ合っているし…。
川木と留流水も、さりげなく腕を組んだりしている。
「中学の修学旅行の夜とか、憧れてたんだよな。センコーに隠れて女子と…って」
翔太が言うと、耕治はクスクス笑った。
「ああ。スリルがあって面白かったぞ。女子が部屋に忍んで来たんで、妙に緊張して…。懐かしいな」
「生粋の遊び人だよな…お前」
「遊び人…そうだな。丁度フリーになったことだし、今日は警戒を解いてみようか」
「け…警戒???解くとどうなるんだ?」
「見ていればわかるよ〜ん」
「よ〜んて(笑)」
耕治が翔太と聆笥から10メートル離れて行くと、他のクラスの女子が声をかけていた。
彼がそれに応対すると、ひとり、またひとりと女子は増え続け……。
翔太が指差しで女子の数を数えると、15人になった。
「あ…あいつ、マジで…!?」
「耕治を狙ってる女子は多
いんだよ。耕治が敢えてそっけなく返していたから寄って来なかっただけなんだ」
「蘭花以外の女子にはマジで興味がないから…か?」
「そうだよ。蘭花が側にいた時は、皆遠慮して近寄らなかった。耕治が一番気の抜ける瞬間だったと思うよ」
「ふたり並んでるとモデルみたいだもんな…。いや、芸能人張りの外見だもんな。俺もああいう長い足が欲しい…」
「……で。どうして僕らの後ろにいるんですか?岡崎先生」
聆笥は振り向き、英雄を見上げた。
「ここが最後尾なんだよ。ほら、ここに荷物を置いていいぞ」
英雄は手押しの荷台を示した。
そこには段ボール箱が二つ、積まれている。
翔太と聆笥は食料だけを段ボール箱の上に乗せてもらう。
「何が入ってるんですか?」
「菓子パンとペットボトルのお茶だよ。各クラス分用意したんだ。これはうちのクラスの分」
「……そんなに酷いんだ………」
「後、村上先生が殺虫剤を持参してくれているから、ホテルに着いたら早速害虫を退治してやるからな」
「ちなみに、費用は何処から…」
「この宿泊研修を経験した先生方がカンパしてくれたんだ。俺達もポケットマネーを出したさ」
「…………もう帰
りたい(泣)」
そんな二人のやり取りを背中に、翔太は指を鳴らし、レックスは飛び跳ねた。