精霊の唄(怨霊編)

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5月5日、土曜日。


蘭花の私室にて。


「蘭ちゃん、蘭ちゃん。大野にメールはしたの?デートしてくれるって?」

「い…一応……昼に待ち合わせ…」

「ったく…大野ってば、蘭ちゃんを不安にさせるなんて。こ〜んなにフカフカふにふになのに」

「Σあっちゃん!」


亜里沙は蘭花の豊かな胸を揉んだ。


「いいなぁ、いいなぁ。どうやって大きくしたの?」

「し……知らないよ!か…勝手にデカくなっていったんだよ…」

「まあ!羨ましい…。やっぱり、好きな人が触ってくれないと不安よね〜。本当に好きなの?と疑いたくなるわよね〜」

「そういうんじゃないんだけど…アタシ、あっちゃんが羨ましいんだ。だから、早く………その…………」

「だったら大野にお願いすればいいのに。翔太君が言うには、相当蘭ちゃんに惚れ込んでるみたいよ?」

「そ…そう…?でも……何かさ…自分から、したい♪なんて言ったら、下品な女だな…って思われそうで恐いんだよね…」

「う〜ん…男の子からきっかけを与えてほしいものよね〜…」


亜里沙は腕を組んだ。


「でも、大野も粘るわね。蘭ちゃんが、未だにおっぱいも触らないしパンツも見せていないって言った
時は本当、驚いたわ」

「あっちゃん……大胆だね」

「カップルになったのに、手を繋いでもいないのよね?」

「あ…ああ…」

「これは翔太君の言う通りね…。蘭ちゃん、大丈夫よ!大野は蘭ちゃんが好き過ぎて気を使っているだけで、蘭ちゃんか嫌いな訳じゃないのよ」

「そ…うかな…。アタシ、自信なくて…」

「元気を出して!ね!今日しちゃうわよ、きっと!」

「でも………キスだけで意識がなくなるのに………大丈夫かな………」

「それが問題ね…。蘭ちゃんは本当、純情よね…。ああん………もう、可愛いんだからッ♪」

「はあ……」

「それじゃ、頑張ってね♪お邪魔しました〜」


亜里沙が部屋を出て行くと、蘭花は深い溜め息をついた。


「はぁ…。あっちゃんは、ああ言ってくれたけど……向こうはどう思ってくれてんだろ」


怨霊騒ぎのお陰で、甘えたくても、なかなか甘える機会がない。

今日こそは…と思う。


(憧れてたんだよなぁ…。ドラマや映画みたいなラブシーンに)


男勝りのお転婆と言われてきた自分に、まさかの彼氏が出来た。


(しかも、理想像に100%当てはまるんだよなぁ…。ホント、奇跡だよ)


着て行く服を選
び、お気に入りのコロンを振り掛け。

綺麗に身なりを整えて部屋を出ると…。


「蘭花に暖簾を継がせたいのじゃ!嫁にやるなぞ許さん!」

「お母さん…。蘭ちゃんには好きなことをさせてあげましょうよ。ね」


祖母と母親の声が聞こえる。

自宅が狭いのだから仕方ない。


「ワシの…ワシの店が……」

「だいたい、材料の質にお金をかけ過ぎですよ。お客さんが少ないから赤字の一直線。いい加減、お店は畳みましょう」

「ワシの………店が………」

「ふぅ…。お母さんったら、寝てる時くらい黙っててくれないかしら」

(Σ寝言かいッ!!!!!)


蘭花は呆れ、母親の元へ赴いた。


「母さん。出掛けて来るから」

「あら。デートね(笑)」

「ぅ…………」

「大丈夫よ。おばあちゃんのことは気にしないで、蘭ちゃんはしたいことをしなさいな」

「…ありがとう」

「お泊まりの時は連絡しなさいね。ふふふ」

「…行って来ま〜す」


祖母は過剰な心配性だが、母親に理解があるので、それだけが救いだった。
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