精霊の唄(怨霊編)

□敵視(全21ページ)
1ページ/21ページ

平成24年4月。

入学式。


校長「―――以上をもって、私の話は終わる。心して新学期生活を送るように」


ここ“吾川高校(あがわこうこう)”の校長は話が長いと有名だ。

高校二年生になった織谷翔太(おりやしょうた)は、大胆にも大きなあくびを繰り返す。


「ふぁあ…」

「さっきから、物凄くうっとうしいんですけど…」

「んぁ…何が?」

「君のあくびが。新学期くらい、しっかりしたらどうなんですか」

「お前、あの校長の話を真面目に聞いてんの?」

「ええ」

「春休み、家族旅行して自然を楽しんだとか、そんな話を全部?」

「そんな話はしてないからね?何か、僕がアホみたいじゃないですか」

「お前、アホだもん」

「…死ね」

「ボソッと言わないで。怖いから」

「いや、ほんとマジでうっとうしい」

「お前のがうっとうしいぞ…」


そんなこんなで、校長から新任や赴任の教師が紹介された。


『国語担当の姫川です』

『保険医の霧下です』


今年は二人の男女だけのようだ。


「霧下?」


翔太は、霧下と名乗った男性を見る。

「どうしました?腹でも下しましたか?」

「アホか。お前じゃあるまいし」

「僕は、そんな下品なことはしませんよ」

「お前、う●こしねぇの?腹の中で腐らせてんの?ヒェ〜」

「…やっぱりお前、死ね」


翔太とやり取りしてるこの少年は、親友の御伽裡聆笥(おとぎりれいす)。

超大金持ちらしいが、翔太の夜遊びには付き合うわ外泊はするわ親の監視はないわ、かなり自由なお坊ちゃまだ。


「今日は、どうすんの?家来る?」

「あなたのお母上に依ります」

「そっか。母ちゃん、原稿の〆切が今日だって言ってたから大丈夫かな」

「そう。ケーキでも買って行くよ」

「サンキュー」


翔太は再び、霧下と名乗った男性を見つめる。


「…翔太君。一体どうしたのです?」

「…いや…ちょっと…」

「?」


聆笥が首を傾げるのを横目に、翔太はずっと霧下の顔を見つめていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ