精霊の唄(怨霊編)
□敵視(全21ページ)
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平成24年4月。
入学式。
校長「―――以上をもって、私の話は終わる。心して新学期生活を送るように」
ここ“吾川高校(あがわこうこう)”の校長は話が長いと有名だ。
高校二年生になった織谷翔太(おりやしょうた)は、大胆にも大きなあくびを繰り返す。
「ふぁあ…」
「さっきから、物凄くうっとうしいんですけど…」
「んぁ…何が?」
「君のあくびが。新学期くらい、しっかりしたらどうなんですか」
「お前、あの校長の話を真面目に聞いてんの?」
「ええ」
「春休み、家族旅行して自然を楽しんだとか、そんな話を全部?」
「そんな話はしてないからね?何か、僕がアホみたいじゃないですか」
「お前、アホだもん」
「…死ね」
「ボソッと言わないで。怖いから」
「いや、ほんとマジでうっとうしい」
「お前のがうっとうしいぞ…」
そんなこんなで、校長から新任や赴任の教師が紹介された。
『国語担当の姫川です』
『保険医の霧下です』
今年は二人の男女だけのようだ。
「霧下?」
翔太は、霧下と名乗った男性を見る。
「どうしました?腹でも下しましたか?」
「アホか。お前じゃあるまいし」
「僕は、そんな下品なことはしませんよ」
「お前、う●こしねぇの?腹の中で腐らせてんの?ヒェ〜」
「…やっぱりお前、死ね」
翔太とやり取りしてるこの少年は、親友の御伽裡聆笥(おとぎりれいす)。
超大金持ちらしいが、翔太の夜遊びには付き合うわ外泊はするわ親の監視はないわ、かなり自由なお坊ちゃまだ。
「今日は、どうすんの?家来る?」
「あなたのお母上に依ります」
「そっか。母ちゃん、原稿の〆切が今日だって言ってたから大丈夫かな」
「そう。ケーキでも買って行くよ」
「サンキュー」
翔太は再び、霧下と名乗った男性を見つめる。
「…翔太君。一体どうしたのです?」
「…いや…ちょっと…」
「?」
聆笥が首を傾げるのを横目に、翔太はずっと霧下の顔を見つめていた。