永遠の存在U

□苦手意識(全27ページ)
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深夜0時半。


慶太と光輝は同時に起き上がった。


「…便所か?」


「…いや、目が覚めただけ…」


「………」


夜中に二人共に起きる時は、今まで良いことがなかった。


幼少の頃、二人でゴキブリの恐怖に震えたこともある。


「…ゴキブリ…再来…?」


「ゴキブリなんて、もう敵じゃないだろ?」


嫌な予感がして、そ…と部屋を出た。


居間の照明が眩しい。


「…父さん?」


テーブルに、父親が突っ伏していた。


「父さん。こんな所で寝たら風邪引くって」


光輝が肩を揺さぶった。


「…うぅ…」


父親の変な唸り声に、慶太は驚いて背中に手を当てた。


「父さん?大丈夫か?」


「…慶太…光輝…?どうかしたか…?」


父親は険しい表情で下を向いたままだ。


「具合い悪そうだな…」


「…何でもない…。少し疲れただけだ…」


慶太と光輝は、二人がかりで父親の重い体を引っ張り上げてやった。


「…強くなったものだ」


「感心してる場合かよ。病院に行こう。な?」


「…心配ない。寝れば…平気だから…」


父親はうつ向いたまま部屋へと入って行く。


「…慶太。明日、車出してやったら?」


「けど、バイクのが早いと思う。ほら…こないだ、誠之を乗っけて行ったじゃん」


「ああ…。何分かかった?」


「大方30分…だった」


「…快速に乗る方が早いな…」


「…いや、何とかしよう。地図は何処にやったっけ?」


二人は地図を広げ、道を調べた。


父親を楽させてやる為に。


しかし、いつしか眠ってしまい…。


「リビングの電気も消さんと…何をしていたんだ?」


二人は父親によって叩き起こされた。


「いっけね…」


「結局、見付からなかったな」


「何の話だ?」


「父さんは通勤に、どれくらいかかってるのかってこと」


「え?20分かかるか、かからないくらい…かな。それがどうした」


「その…俺、マスターの店でバイトしようと思って。深夜バイトだからさ、朝とか夕方は暇じゃん?あ…あんまり言わせんな、こんなこと…」


慶太は照れ臭そうに目を合わさないが、父親は喜んでいた。


その光景を見ていた、勇気と希望。


(親の通勤時間も知らなかったのか…?)


何だか妙な感じだと驚いていた。




〜END〜
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