永遠の存在U

□宿敵(全20ページ)
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翌日。


夕方になると、誠之は菅原大橋で待った。


「…やっぱり来たな」


「何か用か?僕は、これからバイトがあるんだが」


理は必ず夕方に現れている。


誠之の読みは正解だった。


「お前の母親のこと、俺の親父は関係ない。ベトナムの熱病は当時、治療法がなかったらしい」


「何故そんなことが分かるんだ?」


「望月って名前の、医学会の最高権威に調べてもらった。間違いはない」


「…望月宮路…か。貴様、物凄い人間と知り合いなんだな」


「俺もビックリさ」


誠之が苦笑すると、理も肩をすくめて、笑った。


「それで、わざわざ張っていたというのか。物好きな奴だ」


「誤解が解けないと、お前…また俺を襲うだろうが」


「すまなかったな」


理は長髪を背中へと払い、歩き出す。


誠之とすれ違いざまに言った。


「フンッ。貴様とは、別の形で勝負したいものだ」


「まずは、泳げるようにしておけよ。話にならない」


「…時間があれば、のしてやる所だがな…」


理はスタスタ歩いて行く。


「バイト、頑張ってな」


誠之がそう声を掛けると。


理は無言で、手を挙げた。


(ライバルって、こんな感じなんだな)


少し嬉しくなった。


「誠之〜。今日は外食にしようぜ〜」


慶太が遠くで手を振っている。


「今行く!」


誠之は駆け寄り、慶太の肩に腕を掛けた。


「誠之。何かご機嫌だな」


「良いじゃん、別に。何を食べに行くんだ?」


「回転寿司に決まってんだろ?うち、貧乏なんだから」


「俺、寿司って初めてだ。勝負しようか」


「お、上等じゃねーの」


二人の笑い声が、辺りにこだました。


父親が人殺しだろうが、厄介な存在だろうが。


そんなことは、彼らには関係なんてなかった。


築かれた絆の方が、何よりも強いのだから。




〜END〜
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