永遠の存在U

□宿敵(全20ページ)
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夏休みも終わり間近。


今日は雨上がりの為、少し涼やかだ。


夕方だというのに、日はまだ高い。


誠之は買い物袋を手に、菅原大橋を歩いていた。


菅原大橋とは…サンディアランスがある菅原駅前にある大きな橋で、元々は川が阻んでいたのだが。


“駅が目の前にあるのに、どうして迂回しなきゃならない”


そんな住民の念願が叶い、建設されたばかり。


誠之は菅原大橋の下に流れる川に、少しショックを受けていた。


(せっかく川があるのに…)


川は汚い。


下流には、ゴミが山のように溜っている。


時々、浮浪者とゴミ収拾の業者がもめていた。


「やっと見付けたぞ!!!」


そんな怒鳴り声に、周りの人々が誠之を見た。


「?」


誠之は振り返る。


「三山誠之!!!」


目の前に、長髪の男がいた。


丁度、誠之と同じ年頃だろうか。


「…何だ、あんた」


「貴様の父親は、僕の母親の仇だ!!僕は貴様達を許さない!!」


男は身構えた。


「何を言っている」


「問答無用!!!」


男はいきなり殴りかかってきた。


誠之は訳が分からず、体をひねって攻撃をかわした。


「お前…何なんだ?!」


「うるさい!!!」


男は、また殴りかかって来た。


誠之はもちろん身をかわす。


男はたたらを踏んで、半身が橋のへりに…。


「あ…ああああッ!!!!」


男はそのまま川へ落ちた。


誠之は半ば慌てて橋から身を乗り出した。


「ガボッ!ち…畜生!不覚を取った…!覚えてろ…ゴボッ…」


男は川に沈みながら流されたようだ。


「…な…何なんだ…?」


誠之は恐る恐る背後の人々を見た。


人々は、何も見なかったように通行した。


(…助けなくて良いのか?)


訳も分からず、いきなり殴りかかって来た相手。


誠之は妙に腹が立った。


なので、流された男が下流で救助されたのを見届け、帰宅した。
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