永遠の存在U

□海水浴(全24ページ)
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慶太は起き上がり、呆然となる。


太陽は昇り、窓から見えるビーチは活気に満ちていた。


(いつの間にか寝ちまったのか?)


気持ち良くて…つい、眠ってしまったのだと頭を掻いた。


辺りを見回すが、清香の姿はなかった。


「………」


ふと、感触を思い出して胸に手を当てる。


自分の心臓の音が聞き取れた。


「慶太さん!朝だよ!早く出発しようよ!」


ドンドンとドアを叩くのは、清香だ。


「もう…?分かった、すぐ行く」


着替えを済ませ、荷物を担いで部屋を出た。


ロビーへ行くと、全員が待っていた。


「良く眠れた?」


清香に訊かれ、微笑んでみせた。


「さあ、張り切って行こう!今度は山でキャンプだ!」


麗児が拳を突き上げる。


「宿題が終わらないよぉ」


「後で見てあげようね」


実と賢児は手を繋いで歩き出す。


「皆いるみたいだな」


「さあさあ、忘れ物はないかしら?」


健一と椿が先導している。


「誠之。どうかしたのか?」


フラフラ歩く誠之に、光輝が訊いた。


「…結局、一睡も出来なかった…」


「何でまた…」


「…せめて…せめて、後もう少し…時間が欲しかった…」


誠之は舌打ちした。


「一体、何を悔しがってるのかな」


「…私に訊かないで下さい…」


話を振られた日和は、光輝と誠之の間をすり抜ける。


「何だか…怒ってるな」


「ああ…やはり怒ってるのか…。俺が、あんなことしなければ…」


「あんなこと?」


「何でもない…」


そのやり取りを聞いていた、慶太と清香。


「日和ちゃんは、光輝さんに邪魔されたんだね」


「一体、何を邪魔したんだろうな」


二人は光輝を見るが、光輝は「さあ?」と首を傾げていた。




健一が言った。


「お前達が迷い込んだ屋敷。正体が分かったんだ」


あの…幽霊屋敷だ。


「主人は奥さんと二人で暮らしていた。しかし、なかなか子供を授かれなかった」


そんな時…ある日、妻が病で死んだ。


一人残された主人は、その頃から身よりのない人間を招き始めた。


身よりのない死体を永久保存する為の研究をも始め…。


対象は、招いた身よりのない人間。


「…ネクロフィリア…か」


慶太と光輝は、あの老人に哀れみの感情を抱いた…。




〜END〜
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