永遠の存在U
□親不孝者(全9ページ)
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野杉は言った。
「母親は、父親を憎んでいると文面に表していたか?」
「………」
「小父さんが知る限り、憎む所か…心配していた。ちゃんと食べているだろうか…布団で寝ているのだろうか…とな」
「………」
「…子供は親を選べないと不愉快かも知れない。しかし、親にとって子供は絶対的な存在なんだ。親は子供を心配するあまり正そうと、少々口うるさくもなる」
「…何熱く語りに入ってんだよ。んなこっ恥ずかしい話、今時のガキにはうっとおしいだけだぞ」
慶太はバリバリと頭を掻いた。
「やれやれ…。風呂に入って、さっさと寝ようか。あ〜疲れた」
野杉は立ち上がり、その場を立ち去った。
「…父親に復讐するって気持ちに、変わりはないか?」
慶太が誠之に訊いた。
「…分からない。時間が…欲しい…」
「ちょっと進歩したって感じだな。良かったな、母親の本心を知ることが出来て」
慶太も安心した様子だった。
「…母さんは、ここへ戻る決心をしていたんだな…。もっと早くそうすればとは思わない。母さんは、きっと迷っていたんだ…」
「そうだな…。どうだ?来て良かったか?」
「ああ、もちろん。あんなに良い親父さんなんだ。あまり心配をかけない方が良い」
「へいへい…。良い親父ねぇ…。ちょっと変わってるけど、宜しく頼むよ」
慶太は溜め息混じりに言った。
「これから…どうなるのだろう」
「分からない。けど、良い方向に向かっていることだけは確かだ。これからもっと沢山の人間と話して、もっと笑うといい。絶対に幸せんなるからさ」
「…そうなると良いが…」
誠之は恐る恐る慶太に訊く。
「…清香は…どうなるんだ?」
「そりゃあ…由梨香小母さんの所に貰われるだろうな。やっぱ不安?」
「…半身のようなものだから。あんたも分かるだろう?」
「まあな」
同じ双子なのだからと、慶太は肯定する。
「あいつが、慶太か光輝を選べば…」
「とうとう誠之もそんなことを言えるようになったんだな」
「真面目に言っている。あんたはどうなんだ」
「あのなぁ…。清香を目の前に、そういうことを言っちゃう訳?ほら見ろ、光輝の目つきが変わってる」
光輝と清香は、それぞれ兄を睨みつけている。
…先行が不安だと、誠之は溜め息をついた…。
〜END〜