永遠の存在U
□親不孝者(全9ページ)
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7月下旬。
道路には陽炎が立ち上り、中年の親父が汗を拭ったタオルを搾り、足元に落ちる水が見る者にとって不快にさせた。
「…あぁあっ…ぢぃいぃい…」
「本当…暑いな…。あのまま北海道に残れば良かった…」
「…賛成〜…」
慶太と誠之は買い出しに来ていた。
「後、何だっけ…」
「…もう充分だろう…。早く帰ろう…」
炎天下の中、二人は帰路に着いた。
「…ただいまぁ…」
「お帰…フッ…クッ…!!」
玄関を入ると、光輝が鼻を押さえた。
「くっ…臭いッ!!お前ら、何か臭いぞ!!」
「それはヤバいな…。何でだろ」
「…色々…混じって…何だか分からない…」
「…これか…?」
誠之が、買って来たばかりの食材を示した。
「くっさぁああ!!!!」
「玉ねぎが腐ってる…」
「どれだけ暑いんだ…」
慶太がそれを捨てに行った。
「はぁ…まだ鼻がおかしいよ…。誠之、シャワー浴びたら?」
「ああ…すまない…」
誠之がシャワーを浴び始めた時、慶太が帰って来た。
「参ったぜ…。近所のオバハンらにチラチラ見られてよ…」
「…アレだと思われたのか…。し…しばらく近寄るんじゃないぞ。く…くっさ…」
光輝は鼻を押さえて居間へと逃げた。
「ショックだ…」
「け…慶太さん…」
便所に入っていたらしい清香が、脱衣所から顔を覗かせた。
「ち…違うんだッ。これには訳があって…」
「き…気にしないから、大丈夫だよ…。あ…あのね、手術すれば…治るんだよ…」
「清香、待ってくれ…。俺は違うんだって…」
慶太から発せられる玉ねぎの腐った臭い…。
清香は完全に勘違いして、居間へと逃げた。
慶太はシャワーの音がする風呂場のドアを叩く。
「…誠之〜…風呂まだかぁ〜…」
…相変わらず騒がしい家だ。
夕方になって、慶太への誤解は解けた。
「なぁんだ。玉ねぎを捨てに行って臭いがついたんだね」
清香は笑っていた。
「体臭は紳士のたしなみだ。ほら、どうだ?」
「香水?」
「制汗スプレー」
「どうせなら、毎日しておいてね。というのも…」
清香は男性陣を見回す。
「男って…どうしても体臭があるじゃない?油っこいし…」
「えっと…ごめん…」
清香の小言に、男性陣は謝罪する。