永遠の存在U

□迷子(全6ページ)
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少刻経ってから、インターホンが鳴った。


「お父さんだ!」


実は玄関へと駆けて行く。

光輝が玄関のドアを開けてやった。


「実!!」

「お父さぁん…!!!」


実の小柄な体は、訪れた大柄な男に軽々と抱き上げられた。


「本当に、ありがとう…。うちの子が迷惑をかけていなければ良いんだが…」

「いえ。今時の子供にしては、良い子だと思いますよ。本当に良かったですね」

「ああ…。ところで…お父上はどうされている?」

「あいにく今は仕事で留守にしていますけど、元気でやっています」

「そうか…残念だな。また機会があればと、宜しく伝えておいてくれないか」

「はい。あの…」

「ん?」

「…いえ、何でも…。すみません…」


実の父親…上野は苦笑した。


「知らせは届いてる。あの二人の子供が生きていた…とね」

「そ…そうなんです…」


「あのね、お父さん。お兄ちゃん…元気ないんだよ」


実が言った。


「すっごく綺麗な髪の毛で、目も青いんだよ」

「…光輝。お父上は、いつ帰るんだ?」


上野の表情が堅いものになる。


「それが…分からないんです。本人も知らないと言っていて…」

「…君が、そこまで思い詰めている理由を聞かせてくれないか?多少の助けにはなるだろう」

「…誠之は…」


光輝はうつ向いた。


「…母親が病気になったのは、自分のせいだと思っていて…」

「何故、そうなるんだ?」

「…憶測ですが…。母親は父親を忘れたかった。しかし、誠之があまりにも父親と似ていたから、辛かったんだと思います。母親も…誠之自身も…」

「成程…。君のお父上が帰るまで、その話題から反らすといい。明るく楽しくしていれば、忘れることは出来なくとも辛い思いは軽くなるはずさ」

「分かりました」


光輝は安堵の溜め息をついた。


「気が楽になりました」

「それは良かった。それじゃあ、お父上に宜しく。本当にありがとう」

「バイバイ、お兄ちゃん」


上野親子は帰って行った。


光輝は居間でテレビを観ている誠之を、そっ…と見つめる。


(…明るく…明るく…ね)


しかし…迷子の子供を拾って来るなんて。

しかも、ちゃんと世話をして…。

ぶっきらぼうだけど、優しい奴には変わりない…と、光輝は心の中で笑っていた。




〜END〜
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