永遠の存在U
□迷子(全6ページ)
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6月になって、まだ日も浅い。
日の入りは早く、落ちるのは遅い。
もう七時を回っているというのに、まだ空は明るい。
誠之は慶太に、よくお使いにかり出される為に随分と詳しくなった市内を歩いていた。
(遅くなったな…。早く帰らないと)
今日は慶太のお使いで、彼の親戚の所に行った帰りだ。
『俺達の親戚とか仲間関係の人間ばっかだから、怖がることはない。人間不信を治す為にも外へ出た方が良いと思ってな』
(…か。まあ…悪くない…かな)
どうも慶太の策略に乗せられているような気がする。
誠之は一つ溜め息をついて、市内を抜けて駅前へ出た。
ふと、シンボルの彫像の側で子供がうずくまっているのに気付いた。
「…?」
この辺りでは特に珍しくもない。
関わらないでおこうと決めた時…子供がふと、こちらを見た。
目が合って、子供はまた顔を伏せる。
(…友達と喧嘩でもしたんだろう)
そう思い、気には留めずに帰宅した。
「お帰り。遅かったね」
丁度、光輝が絵の具で汚れた手を洗いに洗面所へと行く所だった。
「ただいま。すまない…。麗児も賢児も、なかなか帰してくれなくて…
」
「アハハ、良かったじゃないか。楽しくやれたみたいで」
「…そんなことは…」
「ところで…。例のアレ、買って来てくれた?」
「あ…」
誠之は今まで見せたことのない表情になった。
「…すまない…」
「誠之にしては珍しいね。良いよ、今すぐ必要な物じゃないし」
「…いや、確か…駅前の店がまだ開いている。行って来るから」
「え?誠之、もう夜遅いし…物騒だから」
「それじゃ」
「あらら…。ひた向きなのね…」
玄関を走り去った誠之を見送り、光輝はクスクス笑う。
誠之は駅前の店で、光輝の頼まれ物を購入した。
(何に使うんだろう…)
首を傾げながら歩いていると…。
シンボルの彫像の側に。
(…あ)
先程の子供がうずくまっている。
誠之は周囲を見回した。
誰一人として、子供に見向きする気配がなかった。
(冷たい街だな…)
自分も人のことは言えない。
道行く人々の冷徹さに、誠之は少し動揺を覚えて子供の元へ駆け寄った。
「おい。どうしたんだ」
言うと、子供は顔を上げた。