永遠の存在U

□黄金週間(全15ページ)
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5月3日。


ゴールデンウィーク。


誠之と清香が母親を失いつつも無事だったことを報告する為。


父親の兄の所や、由梨香の実家への訪問が、やっと終わったと安心した慶太。


ようやく自宅へと帰って来れた。


「ま、適当にくつろいでくれや」


「はぁい」


「…本当に、あんたは適当な人間なんだな…」


誠之と清香はリビングに腰掛ける。


「おかしいな…。光輝?いないのか?」


今日からゴールデンウィーク。


光輝は大学が休みのはずなのだが…。


携帯電話も繋がらない。


「どうかしたのか?」


誠之が訊いた。


「いや…弟がいないんだ。生活費は全部、あいつが持ってるから」


「弟が財布を管理?どれだけ信用されていない兄貴なんだ…」


「ほっとけ」


時刻は昼前。


そろそろ昼食時だ。


「…まあいいや。誠之、買い出しに行こう」


「俺もか?」


「この辺の地理を覚える為だ。清香は光輝が帰って来たら、連絡してくれ」


「はい」


慶太と誠之が出掛けて、しばらく経ってから。


玄関のドアが開く音に、清香はそちらを向いた。


「…だ…誰…?」


「あたし、三山清香。あなたが光輝さん?」


「そうだけど…。君が清香…」


光輝は荷物を置いて、辺りを見回した。


「慶太は?」


「誠之と買い出しに行くって。あ…そうだ、連絡しなきゃ…」


清香は慶太へとメール送信する。


「買い出し???」


「はい」


「慶太は買い出し出来るほど残っているのかい?」


「みたいですよ。慶太さん、凄いですよね」


…一体、アイツの収入源はどうなっているんだ。


つくづくそう思う。


清香は光輝の右手首に包帯が巻かれているのに気付いた。


「あの…その怪我…」


「え?ああ…腱鞘炎になっちゃってね」


「大丈夫ですか?」


「ありがとう。平気だよ」


光輝は荷物を担いで部屋へ入る。


清香は荷物の中にあるスケッチブックに目がついた。


光輝が戻って来ると、清香は訊いた。


「光輝さんは絵描きさんなんですか?」


「ああ。美大生なんだ」


「うわぁ…!良かったら絵を見せて下さい」


「ああ。どうぞ」


光輝が示したのは、脱衣所の向かい側にある部屋。


清香は部屋の中を覗く。
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