永遠の存在U
□真紅の象徴(全12ページ)
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中年の男性…健一は快く旅費を工面してくれた。
「悟史の子供や母親を連れ戻すのが目的…。それ以外にも目的を作っておいてくれたら助かるんだが…」
「分かってるよ。小父さん達の友達が離婚しないように説得するんだろ?俺も嫌だ…離婚なんて」
慶太は悲痛な表情で言った。
「放ってはおけんからな…。本当に助かる。ありがとう」
健一は心から安心したようだ。
「伯父さん。父さんには内緒にしておいてね」
「ああ、分かった。だが…光輝。大学はどうするつもりだ?」
プータローの慶太とは違い、光輝は美大生。
明日も講義がある。
「…光輝、お前は学業を優先しろ」
「でも…」
「大丈夫。ちゃんと向こうには連絡してくれるんだろう?」
慶太は健一に訊いた。
「ああ。望月という医者を訪ねると良い。段取りを確実にするのは俺の十八番だからな」
そう言って、健一は携帯を手に通話をしたり、奥さんと話し合ったり。
「やあ、慶太に光輝。久しぶり」
声を掛けられ、振り返ると…二人の少年が笑顔を向けて立っていた。
「麗児に賢児じゃん!」
「来てるって聞いて、顔を見せようと思いまして…」
二人の少年は、健一の子供…慶太と光輝の親戚だ。
「賢児は受験に受かったんだってね。おめでとう」
光輝がそう祝福した。
賢児と呼ばれた少年は照れ笑いする。
「ありがとうございます」
「聞いたぞ聞いたぞ。せいぜい、叔父さんにはバレないようにしろよな。それでなくても慶太は道楽者なんだし」
麗児と呼ばれた少年が、慶太にそう言った。
「分かってるよ。お前ら、光輝のこと…頼むな」
「アハハ。光輝はあなたとは違って、しっかりしている。俺はむしろ、あなたの方が気がかりなんだけど?」
「麗児…お前、覚えてろよ…」
そんなこんなで、健一の段取りは終わり…。
宮島の連絡先も教わり、準備は整った。
慶太は単身、北海道へと旅立つことになるのだった。
〜END〜