永遠の存在U

□真紅の象徴(全12ページ)
1ページ/12ページ

四月も終わりに近付いた。


慶太は携帯を手に、今日もこんな断わり文句を口にしていた。


「俺は忙しいっつってんだろうが。つか、もう掛けて来んな」


そうして通話を断つのは、これで何十回目だろうか。


「慶太…良いのか?」


「いーんだよ。さあ、時間が勿体無い。行くぞ」


いつか友達を無くすぞ…と思うが、光輝は何も言わなかった。


慶太が行動を起こしてくれなければ、自分は本当に何も出来ないのを痛感していたから…。


それに、慶太は何だか楽しそうだ。


「父さん…ごめん。使わせてもらうよ」


光輝は父親から預かったネットバンクから携帯電話へとキャッシュを必要分チャージした。


「お前もチャージするか?」


「いや、金には困ってないからいいよ」


…一体、コイツの収入源はどうなっているんだと、つくづく思う。


双子は、これからレッドステーションという会社へ向かう。


支社はいくつも点在するが、会長と面会するのには本社の方が確実だと考えた。


本社は銀座にある。


「銀座かぁ…」


「慶太?」


「いや、何でもない…っと…」


慶太は立ち止まる。


目の前に居た数人の男女が「あー!!」と声を上げたのだ。


「慶太!!忙しいって言ってたのは、そうだったんだ!!」


「俺らも合流させてくれよ!お前がいないと張り合いねぇんだからさぁ!」


「それ、誰なの?!短大にいたっけ!!」


ギャアギャア騒ぐ男女のそれを聞いて、光輝はショックを受けた。


きっと、この男女は慶太の短大時代の同期だろう…。


慶太は今年、短期大学を卒業したばかり。


そして、その短期大学で慶太は「保育士」の免許を獲得した。


この男女が、そんな短大の同期とは思いたくなかった…。


「…慶太…」


「分かってる。じゃ、俺ら急ぐから」


「ちょっと待ってよ!何処に行くのよ!」


「それ…まさか彼氏じゃないでしょうね?」


「えー?!やだぁ…」


慶太は一人の女の顔面を躊躇なく殴りつけた。


「俺のことはともかく…人の弟のことを馬鹿にしやがって」


鼻血を出して泣く女を、男女が介抱する。


「俺は柔道・空手・剣道・合気道合わせて20段だ。もう一度言ってみろ。マジで殺すぞお前ら…」


慶太は光輝を促して、その場を立ち去った。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ