永遠の存在U
□漆黒の薔薇(全2ページ)
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日本では10月中旬を迎えた頃。
「ようやく会えた…。何も恐れることなどないんだ」
人混みが激しい街路樹の一角。
宮島は、漆黒のスーツを着た男性の腕を取った。
男性はゆっくりと振り返る。
白い肌に青い瞳、銀色の長髪。
誠之とよく似た顔立ちの男性…。
〔…また貴様か〕
男性は掴まれている手を振りほどき、宮島を睨み付けた。
「君の国籍は日本のはずだ。現に日本語を理解しているではないか」
〔…日本語…か。何故だろうか。何故、理解出来るのだろうか〕
「一緒に日本へ帰ろう。国では、子供達が待っているのだぞ?」
〔…やめろ。貴様の言葉を聞く度に…頭痛がする。私に近付くな…〕
「逃げないでくれ。戦ってくれないか。君が失った記憶と…過去と戦ってくれ」
〔つぅ…〕
男性は苦痛に顔を歪め、こめかみを押さえる。
「ランドル。君の本当の名前は、三山悟史だ。そして、私は…宮島寿。私達は幼馴染みなのだ。思い出してくれ」
〔…違う…。私は…ランドル…〕
「三山悟史。国では、君の子供である誠之と清香が待っているのだ。野杉先生や、皆がね」
〔…い…嫌だ…〕
「それとも…とっくに思い出しているのか?何故、記憶を拒絶する。悟史、僕は君を助ける為に捜していたんだ。さあ、帰ろう。国へ」
〔だ…黙れ…。黙れ…黙れ…黙れッ!!!〕
男性は鋭く宮島を睨み付けたままだ。
「悟史」
〔オデッサを壊滅させなければ…。これ以上、私の邪魔をするというのなら…貴様には死んでもらう…〕
「邪魔?まさか。僕は、君の為なら何だってやろうではないか。オデッサを壊滅だっけ?僕にも手伝わせてくれないかな」
宮島は、この男性の気が済むのならと考えていた。
〔…何だと?〕
「だって、君と僕は唯一の幼馴染みではないか。良いだろう?」
〔…好きにしろ〕
早速、宮島は部下に命じてオデッサ壊滅の為に動いた。