永遠の存在U
□迷走(全30ページ)
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11月中旬。
都立の高等学校にて。
自分のデスクに向かい、野杉は考え事をしていた。
「野杉先生。具合でも悪いのですか?」
茶髪に青い目の男子生徒が声を掛けてきた。
「いや、別に。何か用か?」
「先生…何か、俺にだけ冷たいですよね。そういうの、やめてほしいんですけど」
「そんなつもりはない。思い上がるな」
「…やっぱりそうだ。何故です?俺、何か悪いことをしました?教えて下さい」
今月の上旬、この男子生徒は編入して来た。
それからというもの、野杉の周りをかぎまわっているようで…。
「松本。お前の目的は何だ?」
そう言わざるを得ない。
「やだなぁ。俺、編入したばかりで心細いんです。何故か皆、俺に近付きたがりませんしね。皆、先生を頼りにしていると聞きました。俺もそう出来たら良いな…って」
「………」
「あれっ?シカトですか?そんなに俺が嫌いなんですか?」
そこへ若い女性教員が現れ、松本と呼んだ男子生徒を制した。
「松本君。どうしたの?先生に何かされた?」
「あ、いえ。俺…そろそろ戻らないと。それでは、野杉先生。また」
松本は去った。
「野杉先生…。彼、編入以前から知っているみたいですね…。あなた方のこと…」
「どうもそうらしい。何を企んでいるのか、全く見当がつかん」
「話をしようにも、我々にも限界がありますしね…」
「PTAか…」
「野杉先生?顔色があまり良くないみたいですが…」
「…少し疲れたようだ。さて、後はホームルームだけだ。行こうか」
「あ、はい」
彼は二年生の1クラスの担任を受け持っている。
彼女は副担任だ。
あの編入生…。
問題があって、その度に編入を繰り返しているとの情報だった。
他の教員は怖がって、仕方なく野杉のクラスに編入させた。
しかも…。
(…あの顔…。整形しているな…)
悟史とよく似ていた。
髪の色は違えども、顔立ちが高校生の時に似ていた。
青い目は、恐らくカラーコンタクトだろう。
(何故?俺に恨みがあるのか?分からん…)
もちろん、面識はない。
だが、松本の方は以前から知っていたかのような冷静さだ。
彼の笑みは、悪魔を思わせた…。