永遠の存在U

□誕生日(全18ページ)
1ページ/18ページ

10月1日。


19時になって、村川夫婦が野杉宅へ訪れた。


「…お父さん。ちょっと痩せたね」


勇気と隣立って、希望が呟いた。


「…感動の再会が台無しだな」


「希望、父さんを虐めないの。先生、本当に助かりました」


村川夫婦は深く頭を下げた。


「大したことはしていない。二人共、全く手がかからなかったんだ」


「そりゃあ良かった。勇気、希望。帰るぞ」


「…はぁい」
「はぁい」


二人は渋々、荷をまとめる。


「今度こそヤバいって思ったんだけどな」


「豊君が弁護士で、本当に良かったわねぇ」


「そうか。もう営業再開はしているのか?」


「んや、明後日からにしようと思ってんだ。従業員が逃げるわ、業者まで逃げるわ。大変だったぜ」


横で話を聞いて、慶太と光輝は「お疲れ様」と囁いた。


「清香。心配かけたわね」


「何だ?恥ずかしいのか?」


ずっと様子を伺っていた清香は、慌てて部屋へ逃げた。


「早くなついてくんねぇかな」


「そうねぇ。頑張りましょう」


村川夫婦は、野杉へと向き直り頭を下げた。


「誠之を、どうか宜しくお願いします」


「必ず、迎えに来るから…それまで…」


「お前達、遠慮はするな。うちには大きいのが二人も居るんだ。何とかなるさ」


聞いて、慶太は光輝の肩を肘で突いた。


「あ…アハハ、俺ら頼りにされてんな」


「そうだな。アハハ…」


どうやら勇気と希望と清香の荷造りが終わったようなので、村川夫婦は立ち上がった。


「…あの」


誠之が二人を引き止めた。


「悪いなぁ…。絶対に何とかするから、今は勘弁…な」


村川が肩を抱き寄せ、由梨香は心配そうに誠之を見ていた。


「俺は平気だ。体には気を付けて」


「お前もな」


「誠之、あなたと暮らせるのを楽しみにしてるわ。時々は遊びに来なさいね」


「…清香を、宜しく…」


誠之は大人しく、部屋へと消えた。


清香は不安な表情で、野杉達に頭を下げて玄関を出た。


「…お世話になりました」


「慶太さん、光輝さん。また遊んでね☆」


精一杯の礼を述べて、一家は帰宅して行った。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ