永遠の存在U
□子供の日(全7ページ)
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清香は一つ溜め息をついた。
「でもね、誠之があんまり泣いて可哀想だから、売春は辞めたの。お陰で毎日、食べる物とか着る物に困ってた」
「…辛かったな」
「うん…そうだね。でも、ようやく来たって感じ。慶太さんも光輝さんも、あたし達を冷たい目で見ないから…」
清香は微笑んだ。
何処か痛々しい笑みに…慶太は胸を締め付けられた。
「無理すんな。こっちが痛いって」
言って、清香の頭に手を置いた。
「な…あ…あたしは大丈夫…」
「そうか?そうは見えないけどな」
清香は…この、初めて見る慶太の表情を見て驚いた。
「…そんな顔も出来るんだ。卑怯だよ…」
「何のことだ?」
「…すっごく、優しい目をしてる。いつもと違う目…」
言われ…慶太は気付いた。
光輝は言っていた。
どうして変わってしまったんだ?
「…昔の…俺は…」
…そう、こんなだった。
何時からか、偽る内に忘れてしまっていた感情。
人の心を包み込んでやりたい。
それで楽になってくれるように。
人を笑顔にする為に…精一杯の慰めを人に与えて…。
「…人も自分も、笑って過ごせる。そんな日常を望んで…ずっと、そうありたいと願っていた」
「…うん」
「…もう大丈夫だからな。お前達は、これ以上苦しむ必要なんてない。誠之も笑っていられるようにするから」
「約束だよ。破ったら、三角木馬だからね」
「さ…三角木馬…」
慶太は冷や汗を流す。
「一体…何処で習うんだよ、そんな言葉…」
「フフフ、内緒だよ。………」
清香は一筋、涙を流した。
「あ…あれっ…?おかしいな…」
「…大丈夫。大丈夫だよ」
頭を撫でられ…次々と涙は流れる。
今までの辛い気持ちの分…流れた。
「…あたしより、誠之のが辛い思い…するかも…」
「え?」
「…お母さんが死んだの…誠之が…お父さんに似てるから…だから…」
「…まさか…」
「…誠之を見る度に、お母さん…凄く悲しそうな顔してた。誠之は気付いてない…。お母さんが死んだ…理由の一つに…」
清香は肩を震わせて、慶太にすがりついた。
「あたし…どうすれば…」
…慶太は何も言えず、黙って清香を抱き寄せる。