永遠の存在U
□子供の日(全7ページ)
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ただ、一つだけ…はっきりしたことがある。
「清香はお金が欲しいのか」
「当然じゃない。お金がないと今の社会では生きて行けない。恵まれてる人には分からないでしょうけど?」
清香は不適に笑う。
「…なあ、聞かせてくれないかな。母親が死んでから、どんな生活を送っていたのか」
「いいよ。誠之には内緒ね」
清香は慶太の隣に腰掛け、声を潜めて話し始めた。
「お母さんが死んだ時、あたしと誠之はまだ9歳だったの」
母親が死んで、葬儀が終わると…ずっと疎遠だった父方の親戚がやむを得ず双子を引き取った。
「お母さんのお母さん…お祖母ちゃんには兄弟がいなかったの。だから…」
そもそも、母親は父親とは血の繋がりがなかった。
なので、父方の親戚はまるっきりの赤の他人。
何の義理もなかった。
「あたし達を冷たい目で見て、学校にも行かせてもらえなかったの。誠之は小父さんの仕事を手伝わされて、あたしは家事を手伝わされて…毎日毎日、ボロボロになってもこき使われたの」
二年間生活して、とうとう誠之が肺炎を起こしてしまった。
「使えない奴はいらない。寝るんじゃない、仕事があるんだって。給料も貰えないのに、滅多にご飯にもありつけないのに…」
父方の親戚がついに、他の親戚にと双子を譲った。
そこでも一切、優しくされることなく…待っているのは、過酷労働ばかりだった。
「四回くらい親戚の所をたらい回しにされて、あたし達が14歳の時に、施設に入れてくれって誠之がお願いしてくれたんだよ」
ようやく過酷労働や様々な虐待から逃れられたと思った。
しかし…。
「…全員が親に捨てられた子供でね。皆のお世話をしてた先生は、ボランティアで来てくれてたの。だから、すっごく冷たくされて…子供同士の喧嘩も止める所か、賭けの対象にして…笑ってた」
「………」
「…誠之が笑顔を見せなくなったのは、その頃なの」
「…そう…」
「あたし達は必死に生きた。いつもお腹を空かせて、他の子供達が死んで行くのを見て…二人で生きた」
まだ幼い体を、知らない異性に差し出して…。
そうして手に入れたお金で生きた。
唯一の家族である誠之と共に、今日まで生きて来た…。