魔法の部屋

□コケコケパニック
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「腹減ったぁ」
事の発端は、シリウスのこの何気ない一言から始まった。
「だったら厨房に行けばいいだろ?」
僕がそう言うと、シリウスはローブのポケットに手を突っ込み、新聞紙に包まれた何かを引っ張り出し、中身を取り出した。
「厨房にはさっき行ってきた。そしたらよ、これしか残ってねぇってよ」
シリウスはそう言ってチキンを一切れ摘み上げた。
「これじゃあ腹の足しにもなんねぇだろ」
不満気に言う彼。そこへジェームズが目を輝かせながらやってきた。
「ならシリウス君、この膨れ薬をチキンにかけてあげよう♪ そうすれば倍の大きさになって食べ応えがでること間違いなし♪」
シリウスは嫌そうな顔をした。僕も嫌な予感がした。ジェームズがこういう楽しそうな顔をする時は、ろくでもないことを企んでいることが多い。
「いや、別にいいって! 他の何かで空きっ腹埋めっから!」
「そうそう! シリウスには僕のお菓子分けてあげるし!」
僕達は慌てて断ったが、ジェームズは聞く耳持たずだった。
「ま、そう遠慮するな友よ♪」
言うが早いか、ジェームズはチキンに薬を2、3滴かけた。途端、チキンはみるみるうちに大きくなっていく。机からはみ出すほどに。
「・・・おい、なんかでか過ぎねぇか?」
シリウスがそう呟いたと同時にチキンの表面が白くなり、ブワッと羽が生えてきた。
「・・・ねえ、・・・なんか、おかしくない?」
僕がそう言ったすぐ後、「コケーッ」という鳴き声が耳に入った。
「「こ、こけー?」」
何が起こったかわかった時にはもう遅かった。チキンがあったところには巨大な鶏がドーンと鎮座していた。チキンを置いていた机は、元チキンの下で潰れていた。
「プロングス、ちょーとでか過ぎ、っつうか変わりすぎだろ?」
シリウスが引きつった顔でジェームズに聞いた。
「でも、これで腹一杯食べられるだろ。さあ、思う存分かぶりついてくれたまえ!」
「できるかーーーーーーーーーーー!!」
シリウスのつっこみの大声に鶏が反応した。こりゃ完全に刺激したな。
「コケーーーーッコッコッコッコッコッ・・・!!」
鶏が巨大なその翼を広げて、こっちに向かって来た。
「「「ギヤーーーーーーーーーーーーー!!」」」
僕達は叫び声に近い悲鳴を上げ、今まで居た空き教室から飛び出した。なぜか鶏も、僕達3人の後を追ってきた。
「あ、皆〜」
向こうからピーターがこちらにやってきた。彼は今まで課題を終わらせるため、図書館に籠っていたんだ。
「ピーター!! 逃げろ!!」
僕は慌ててすれ違う際にピーターに叫んだ。ピーターは初めキョトンとしていたが、後ろから追いかけて来てるものを認識したらしく、目を丸くしてその場にペタッと座り込んだ。
「何やってるんだ!! 早く逃げるんだ!!」
いくら僕が叫んでも、彼は座ったままだ。どうやら腰が抜けたらしい。
このままでは踏み潰される!
僕はそう思い、呼び寄せ呪文を彼にかけようとした。だが、いつの間にかピーターの顔が横にあった。
間一髪のところで、シリウスが戻ってピーターを抱え上げたんだ。
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