音楽の部屋2

□魔王と魔女と二組の双子
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「ところでヴィルヘルム、いつまで一人身でおるつもりじゃ?」
伯母の言葉に、危うく紅茶が気管に入りそうになった。
「へ? な、何を突然?」
「お前もコーネリアスもなかなかそれらしい報告が無いから、わらわも心配になってのぉ。紹介のついでにこの二人などどうかと思っての」
「ろ、ロキ様!!」
「聞いてませんよ!!」
師匠の唐突な発表に双子も立ち上がった。
「まあ落ち着け。こやつと結婚すれば魔王の妻、つまりはこの魔界の王妃になれるのじゃぞ。悪い話ではないと思うが」
「あー、ロキお姉様。せっかくのお気使い悪いけど、俺には、そのぉ、す、好きな子が」
赤面しながら魔王の発した告白に、三人の魔女は一気に喰い付く。
「ほほお? お前もついに恋をしたのかえ?」
「ええ、まあ」
「えちょ、どんな人なんですか?」
「ラッテ、いきなり失礼でしょ」
「でもすっごく気になるじゃない! ロッテだって聞きたいでしょ?」
「そうだけど」
「じゃあ聞きましょうよ! ねえねえ魔王様の好きな人って?」
ラッテが身を乗り出して問いかけたその時、
「覚悟しろ魔王!」
左手の窓を割ってシモンが突入してきた。
「今日こそ貴様を退治してくれる! 覚悟しろ魔王!」
シモンはその茶色の瞳に闘志を燃やし、鞭を手に構える。
「うっわ〜、なにあのマッチョ! タンクトップに生足って気持ち悪〜い!」
「私もあれはちょっとないわ」
「だっろ〜。俺も参ってるんだよなぁ」
本人が目の前にいると言うのに、ラッテとロッテとヴィルヘルムは言いたい放題。
「君達、そいつは魔王だ! 危険だから離れなさい!」
「はっきり言って貴方のが危険だわ」
「そうよ変態男!」
オブラートに少しも包まず、ラッテとロッテはシモンに向けてストレートに言い放った。
「それにあたし達魔女だから平気だもん!」
「まだ見習いだけどね」
「なにっ、魔女だと? 貴様らも覚悟しろ!」
鞭を振り上げて飛びかかろうとしたが、
バッチーン!!
「やかましい!! 茶の時間に騒ぐでないわ!!」
ロキのビンタであっさり撃沈するヴァンパイアハンター。
「ヴィルヘルム、この無礼な輩はお前の友人か?」
「いえ。顔は知ってるけど友人ではありません。微塵も」
ヴィルヘルムはロキにさらりと答えた。床に突っ伏すシモンの手足が痙攣しているのに、二人はスルーしている。
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