屋根裏部屋

□何度でも
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「ほら、シャルロットは綺麗だよ」
風呂場で彼女の体を隅々まで洗い流し、ヴィルヘルムは優しく笑いかける。しかし、彼の首から下がっているペンダントと同じ魔封石と思えないほど、シャルロットの瞳は暗い影を負っていた。
「・・・ヴィルヘルム様」
「なんだ?」
「私と、別れて下さい」
彼女の口から告げられた言葉に、魔王は真っ赤な瞳を驚きで見開く。
「どうして、どうしてそんなことを言うんだ?」
ショックで声が震えた。歯の根がカチカチと鳴って合わない。
「私、ヴィルヘルム様以外の人に、触れられてしまいました。もう、ヴィルヘルム様に愛される資格が、ありません」
「君が望んだことじゃないだろう!」
「ですが、ですが・・・」
座椅子に座ったまま俯いて震えるシャルロットを、魔王は腕の中に閉じ込めた。
「なら、俺が忘れさせてやる! 痛かったことも、苦しかったことも、怖かったことも、辛い思いは全部俺が塗り潰してやる! だから、別れるなんて、言わないでくれ!」
君のことがこんなに好きなのに! 愛してるのに!
自分の服が濡れるのも構わずに、シャルロットを強く掻き抱く。
「ヴィル、ヘル・・・」
青い瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。彼の胸に顔を押し当てて泣きじゃくる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
「なんで謝るんだよ。シャルロットは被害者なんだ。謝ることは何一つないんだ」
「ふえ・・・ふええ、えっ・・・」
魔王の腕の中で人形は声を上げてすすり泣く。
こんなに震えて・・・怖かったんだな、辛かったんだな。
そう察したヴィルヘルムは、何も言わずにシャルロットをギュッと抱きしめた。シャルロットは子供のように、ヴィルヘルムにしがみついて泣き続ける。
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