屋根裏部屋

□愛してるから
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場所は変わって魔王の庭園。そこにはテーブルが設置され、ユーリ、スマイル、ヴィルヘルムが囲んでティータイムの真っ最中だ。
「それにしても、ユーリから俺んちでお茶会を開こうなんて、どういう風の吹き回しだ?」
「ん? なに、気にするな」
「たまには綺麗なお花畑でお茶したいナ〜って思ったからサ、ここらでお花畑って言ったらヴィル君の庭しかないでしょ?」
「まあ、別に構わねぇけど」
ずずっと、ヴィルヘルムが紅茶を啜った刹那、
「こんにちはぁ」
というかわいらしい声が、彼の尖った耳に届いた。
「っ!? しゃ、シャルロット!?」
赤い目が大慌てで周囲を見回すと、庭の入口に小柄な少女の姿があった。
「本日はお茶会に招いて頂けて、ありがとうございます」
にこりと微笑むシャルロットの笑顔に赤面しながらも、さっとユーリの方を振り返る魔王。
「おいユーリ、もしかしてお前がシャルロットを呼んだのか?」
「おや? 言ってなかったか?」
「言ってねぇよ! っつうか、何を勝手に!」
「お前が喜ぶと思って先ほど連絡したのだ。それとも、シャルロットが来るのは嫌か?」
「いや、むしろ凄ぇ嬉しいけど、そのぉ・・・」
真っ赤になりながらしどろもどろに答えるヴィルヘルム。と、その鼻先にバスケットが差し出された。
「お茶菓子にクッキーとスコーンを焼いてきたんです。よろしければどうぞ」
「あ、ああ。ありがとう」
シャルロットからバスケットを受け取ろうと手を出すと、二つの手が重なった。途端に真っ赤になって固まる二人。
「あ! ご、ごめん!」
「わ、私こそ、すみません」
双方赤面して俯いてしまった。横たわる沈黙・・・会話が一切無い。
「・・・ハア」
ユーリは嘆息をこぼすと、スマイルに向かってウインクをした。すると、スマイルは軽く親指を掲げ、ヴィルヘルムとシャルロットにジュース入りのグラスを差し出した。
「二人とも〜、ジュースでも飲む〜?」
「お、おお、サンキュー」
「ありがとうございます」
二人がそう言ってグラスを受け取り、中身を飲んだ刹那、「計画通り♪」と呟いてほくそ笑んだ。
「おおっと!」
バシャア!
「きゃあ!」
ジョーカーが躓いて、手に持っていたバケツの水がシャルロットに全部かかってしまった。
「あら、ごめんシャルロット」
「大丈夫かシャルロット?」
「はう・・・びしょびしょです」
弱々しい声で呟くように答えたシャルロット。美しいエメラルドの髪からドレスのスカートの裾まで水が滴り落ちている。
「ずぶ濡れだな」
「このままだと風邪ひいちゃうよネ」
「ごっめーん、今着替え用意するから、ヴィルの部屋で待ってて」
「え!? 俺の部屋!?」
「あったりまえだろ。このままここで着替えさせる訳にはいかねえし、ヴィルはシャルロットの恋人なんだろ?」
ジョーカーの口から発された「恋人」の単語に、ヴィルヘルムは真っ赤になった。
「ほぉら、早くシャルロット連れてってやれよ」
「お、おう」
ジョーカーに急かされ、シャルロットを自室に連れていくヴィルヘルム。その背後で三人が意味有り気な笑みを交わしていると知らずに。
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