音楽の部屋

□Re Start
1ページ/5ページ

目を開けると、俺は漆黒の闇に包まれた空間にいた。あまりに深い闇に何も見えない。
「なんだここ?」
軽く動いた途端、ガチャリと音がした。見えないが両腕両足を縛られて、身動きが取れなかった。
「おい!! 誰か、誰かいないのか!?」
呼びかけても誰も答えず、何も聞こえない。
訳がわからず、暗闇の中で一人震えた。
目が慣れてくると、ここは部屋であること、両腕を縛る手錠の色は赤、両足を縛る足枷の色は青で、背後の壁に繋がれていることがわかった。
ふと見上げた天井には大きな穴が開いていて、よく見ればそこには鉄格子がはまっていた。
突如、その向こうから得体の知れぬ声が響いてきた。
「罪深き青年よ。お前はこの先永遠に、この部屋からは出られぬ」
その声は男とも女とも、老いてるのか若いのかも判断がつきづらい、不気味な声だった。
だがその声に告げられた瞬間、全ての記憶を思い出した。楽しかった記憶、悲しかった記憶、そして自らが重ねた罪の数々を。
ここにいる理由と結末を悟った。もうあの頃には帰れないのだと。
「その赤い手錠は、お前が流させた血の色。その青い足枷は、お前が流させた涙の色」
声が説明する途中で、俺の耳に大勢の人々の泣き叫ぶ声が。
「痛い!!」
「助けて!!」
「おぎゃあ!! おぎゃあ!!」
「お母さぁん!!」
「死にたくない!!」
老若男女問わぬ人々の悲鳴。耳を塞ごうとしても、手錠に繋がれているためにできない。
「その声はお前が傷付けた人々の声。そして・・・」
声が告げると同時に、激痛が全身を襲う。体には傷一つないが、ありとあらゆる痛みが一度に襲いかかってくる。生きている時には絶対に感じられないものだろう。
「ぐっ!! ぐあああああああ!! がああああ!!」
痛みに身をよじる度に、手足を縛る鎖がガチャガチャと鳴る。
「その痛みはお前が傷付けた人々の痛みだ。お前は、お前が傷付けた人々の数だけ、その悲鳴と苦痛を味わい続けるのだ」
苦痛に耐えながら周りを見渡した。どうやら、ここには俺以外誰もいないらしい。
「良かった・・・」
俺は安堵の息を吐いた。この罰を受けるのは俺だけでいい。ジャック達には何の罪もない。あいつらに酷なことをさせたのはこの俺だ。罪があるのは俺一人だけだ。
「うっ!! うああああああああああ!!」
そう考えている間にも、体を苛む激痛。あまりの痛みに死んでしまうかもしれないが、一度死んでいるから無理だろうな。
人々の悲鳴と苦痛に苛まれ続ける俺の耳に、「るりらるりら」と優しい歌声が聞こえてきた。その時だけ痛みが和らいだ気がする。
とても綺麗で、優しい歌声。誰が歌っているのだろう・・・・・。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ