音楽の部屋

□悪の魔王と暗殺者
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森の中を二人の小さな子供が歩いていた。
一人は赤い髪をした少年で、もう一人はエメラルド色の髪の少女だ。どちらも上等な服を着ていることから、大変いい家柄の子供であることがわかる。
「あれ? ヴィル様、あそこに誰かいますよ」
「え? どこに?」
「あそこです。ほら、あの木の後ろに」
少女が指差した方を見やると、木の根元に誰かが座り込んでいた。
「本当だ。ちょっと行ってみようか」
「はい」
二人はその人物のもとへ近寄って行った。そこにいたのは、白い髪のまだ幼い少年だった。二人の存在に気付いた彼は、すっとこちらを見上げた。
日が沈む直前の夕焼けのような色の瞳。
「俺、ヴィルヘルムっていうんだ。こっちはシャルロット。お前は?」
赤毛の少年はにぱっと笑って話しかけた。すると、彼は二、三度瞬きをして、恥ずかしそうに答えた。
「じゃ、ジャック」
少年がそう名乗った途端にクゥ〜という奇妙な音が。
「!!」
「お腹が空いてるんですね。私、おやつのクッキーを持ってきてるんです。一緒に食べませんか?」
少女は持っていたバスケットを見せた。中には様々な種類のクッキーがたくさん詰まっており、美味しそうな香りを漂わせていた。
「食べる!」
ジャックが即答すると、ヴィルヘルムはその手を取って立ち上がらせた。
「どうせ食べるなら、俺の家に来いよ! うちの庭で最高のお茶を御馳走するぜ!」
「・・・うん!」
目を輝かせながら三人は歩み出した。それを祝福するように、小鳥達の歌声が響き渡る。風に吹かれて木々の枝が揺れ、木漏れ日が三人を明るく照らす。
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