音楽の部屋

□紅の魔王と翠の踊り子
1ページ/11ページ

ジャックがボスの自室のドアを開けると、部屋の主と双子の兄が睨み合っていた。
「ふふふ、これで俺の24連勝だ」
「ま、まだまだぁ! 勝負はこれからだ!」
勝ち誇った笑みを浮かべる魔王に、黒髪の少年は不屈の金色の瞳を向ける。
「ふ、いいだろう。魔王の恐ろしさ、何度でも思い知らせてくれるわ!」
「今度は俺が勝つ!」
双方同時に前を向き、手に獲物をとった。そして、
ピコピコピコピコピコピコピコピコ・・・
鳴り響く緊張感のない音。巨大なモニターには拳を交えるCGキャラクターが。
「・・・ボス」
呼びかけの声に、2人は初めてジャックの存在に気付いた。
「お、ジャック。今なぁ、ジョーカーと対戦してたの」
彼はそう言って手にしていたコントローラーをひらひらと振った。
「もうちょっとってとこまでは行くんだけどさぁ」
悔しそうにジョーカーがぼやく。1回頷くと、ジャックはヴィルヘルムの方に視線を戻した。
「ボス、お客さん」
「客? オッケー、すぐに行くわ」
さっと立ち上がり、ドアノブに手をかける。が、クルリと振り返る。
「そうだ。ジャック、俺の代わりに対戦しといて」
ほい、とコントローラーをジャックの手に押し込むと、ヴィルヘルムは部屋から出て行った。
「そーいやジャック、お前このゲームってやったことある?」
「やり方は知ってる。ボスから教わった」
「おっしゃ! じゃあやろうぜ!」
双子は並んで座ってゲームで遊び始めた。
しかし、
「あ! ごめ、ちょ、手加減して!」
彼はこのあとまたしても苦汁を飲まされることになるのだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ