音楽の部屋

□苦労
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三日月の美しい夜空を横切る姿があった。
雪のような銀髪と、血のように赤い眼と翼、闇に溶ける漆黒の衣装。
「今宵の月は実に美しいな」
「よぉユーリ!」
月夜の散歩を楽しんでいた彼に近寄ってくる者がいた。その者も彼と同じように宙に浮かび、漆黒の服に身を包んで、こちらに片手を軽く上げている。相違点といえば、翼が無いのと、闇夜の中でも映える赤い髪。
「ヴィルヘルムか。どこへ行くんだ?」
「これから町のゲーセンに行くとこ。ステマニの新機種が出たからさ♪」
そう嬉しそうにヴィルヘルムはにへらっと屈託なく笑った。この笑顔を浮かべる青年が、魔王兼腕利きの暗殺者だと誰が想像できようか。
「『げーぜん』? あの人間達が集まるやかましい所か? 好きだなお前も」
「まあな。ユーリも来るか?」
「よかろう。1人で散歩するよりは退屈しなさそうだからな」
退屈が嫌いな吸血鬼と遊び好きな魔王は、2人連れだって町へと飛んで行った。
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