魔法の部屋

□特技と苦手
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セブルス・スネイプは機嫌が良かった。なぜなら、彼の天敵である悪戯仕掛け人達が、医務室に缶詰状態だからだ。
理由は、昨日の飛行訓練術の授業で、悪戯仕掛け人の1人であるシリウス・ブラックが、ピーター・ペティグリューを庇って足にブラッジャーが当たり、足の骨が砕けてしまったからである(ピーター達にブラッジャーを打ったスリザリン生は、ブナの木にボロボロの状態で蓑虫が如く吊るされていた)。しかも、マダム・ポンフリーは研修のため1ヶ月の出張に出ており、誰もシリウスの骨を元通りに治せる人がいない。そんな訳で、普段ならあっという間に治るはずのシリウスの足は、マグル療法で治しているため絶対安静なのだ。当然そんな友人を1人にしとくほど、ジェームズ達は薄情ではない。その証拠に、昨日の夕食の席以来、3人の姿を見かけていない。
「ふふふふふ・・・。これでしばらくの間、平穏な日々が過ごせるという訳だ。もうあやつらに干渉されない静かな日々が・・・」
しかし、現実は彼の希望通りにはならなかったりする。
「イヤッホーーーーー!!」
物凄いスピードの何かが2つ、セブルスの横を走り抜けた。
「ゴーーーーールッ!!」
鳶色の髪の少年が旗を振りながら叫んだ。
「ピーター、リーマス、どっちが1着だった?」
「う〜ん、微妙だけどシリウスかな?」
「右に同じ」
「へっへーん! 俺の3連勝♪」
「くっそー! 箒なら絶対、僕が勝ってたのに〜!」
「な、何故貴様らがここに居るのだ?」
セブルスが声を出したことで、悪戯仕掛け人達はやっと彼に気付いた。
「あ、スネイプ居たの?」
ジェームズが変なオレンジ色の器具の背もたれの横から顔をのぞかせて尋ねた。
「我輩は最初からここに居ったわい。どうして貴様らがここに居るのだ?」
「車椅子でレースしてたんだよ」
セブルスに噛み付きそうなシリウスを遮って、リーマスがニッコリと答えた。
「く、車椅子? あのマグルの足の不自由な者が使うというやつか?」
セブルスが彼らを凝視して尋ねた。
そう、車椅子は魔法界ではとても珍しい物なのだ。魔法界では強力な呪いをかけられていないかぎり、例え足を切断されても魔法や薬で元通りに足を生やせる。だから、魔法界では車椅子はほとんど使われないので、マグルの物というイメージが強いのだ。
つまり、先ほど『変な器具』と表記した物は、車椅子のことである。
「そうだよ。シリウスのために見つけてきたんだ」
リーマスがセブルスに微笑みながら答えた。
「そんな物どこにあったのだ? どうやってホグワーツに持ってきたのだ? それより、何故ポッターまで車椅子に乗っておるのだ?」
セブルスが立て続けに質問してきた。
「ちょ、ちょっと、そんなに一度に聞かれても答えられないよ!」
リーマスはセブルスに言った後、ちらりとジェームズに視線で助けを求めた。
ジェームズがオレンジ色の車椅子の背もたれによっかかりながら話し始めた。
「ん〜、話せば長くなるんだけど、昨夜医務室でさ・・・」
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