音楽の部屋2

□せっかちさんとのんびりさん
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シャルロットが魔王の城を訪れた時、彼は仕事に追われていた。今日は魔界の福祉使用予算提出の締め切りなのだ。
普段はデスクワークなど即放り出してサボるヴィルヘルムも、さすがにこの時だけは真面目に机に向かっている。
「くっそー! 締め切りすっかり忘れてたぜ!」
せわしなくシャーペンをカリカリと走らせながら、魔王は唸り声を絞り出す。せっかく想い人のシャルロットが来てくれているのに、仕事のせいで構えない。締切日を忘れていた己の記憶力の無さにムカついていた。
「あの、もしよろしければお手伝いいたしましょうか?」
とても忙しそうな彼を見ていて、シャルロットは恐る恐るこう申し出た。
「あー・・・んじゃあ、ちょっとお願いしていいか?」
あまりの忙しさに、ヴィルヘルムは彼女の申し出に甘えることにした。と言っても、慣れてない彼女に難しい仕事をさせる気は毛頭無い。何か一番簡単な作業・・・!
「そうだ! 今俺が記入してるこの用紙の予備の作成を頼むよ」
「はい、承知いたしました」
シャルロットに承諾してもらえると、一旦作業を中断して、彼女を仕事部屋へと先に立って案内する。
コンコン
「はいどーぞ」
「アーミィ、仕事のお手伝いさん連れて来たぜ」
部屋の中には少年が一人座っていた。ジャックと同じく白髪に赤い目なのだが、顔に赤いマークは無く、目付きが若干鋭い。
「こいつはアーミィ、ジャックやジョーカーと同じ俺の部下だ」
「アーミィや。よろしゅうに」
「よろしくお願いします」
「彼女はシャルロット、俺の、そのぉ」
「お友達です」
彼女の言葉にショックを受けたものの、なんとか平静を取り繕う魔王。
「仕事のことで何かわからなくなったらアーミィに聞きな。アーミィ、彼女頼むぜ」
シャルロットをアーミィに託すと、ヴィルヘルムは再び仕事と戻っていった。
「よろしくお願いしますアーミィ様」
「挨拶はええから、ここ座りい」
アーミィが隣の椅子をぽんぽん叩きながら招くと、シャルロットは素直にそこに座った。
「ええか、この書類のここんとこにこの判子を押してくんや。わかったか?」
「はぁい」
彼女のこののんびりとした返答に「なんか寝ぼけとるような返事やなぁ」とアーミィは感じたが、「ま、仕事をやってくれてらええわ」と思い直して作業を開始した。
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