音楽の部屋2

□☆・ユーリと携帯電話
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「はいもしもし。あ、うん・・・了解、じゃあネ〜」
「スマイル、それは何だ?」
ユーリが指差したのは、スマイルの持つ携帯電話。
「ん? 携帯ダヨ、携帯電話」
「それが電話? ふっ、戯言も大概にしろ。電話がそんなに小さくて持ち運びなどできる訳なかろう。電話とはこれくらいの大きさの箱で、電話線で壁とつながっているものということくらい、知っとるわ」
そう言ってジェスチャーで電話の大きさを表現する吸血鬼。
「え? ユーリ黒電話で時代止まっちゃってるノ?」
スマイルの片方だけ見える右目が点になった。
「二人ともー、お昼ご飯ができたっスよ」
「あ、アッシュー。ユーリったらサー、携帯知らないんだって」
「え!?」
アッシュも驚愕に前髪の下の目を丸くする。
「それが電話な訳なかろうが。なあアッシュ」
「いえ、それも立派な電話っスよ」
馬鹿正直な忠犬アッシュの発言に、今度はユーリの目が見開く番だった。
「なにっ!? ほ、本当なのかアッシュ?」
「だーから最初からそう言ってんジャン」
「技術が進んで、電話の小型化、持ち運びができるようになったっスよ」
「ヴィル君がよくカチャカチャいじってるジャン。見たことあるデショ?」
「なぁっ!? あれがケイタイなのか!? てっきり奴のゲームキの一つだとばかり・・・」
「最近のだとゲームや写真も撮れるし、テレビ見たり音楽聴いたりできるっスよ」
「っ!! で、電話にそんなに多様な機能が!!」
「はい。他にもメールとか、お財布機能とか」
「アッシュー、もうそのくらいでやめといたほうがいいヨ。これ以上説明してもユーリの頭がパンクしちゃうだけだから」
携帯の機能の説明を続行しようとするアッシュをスマイルが制止する。この時点ですでにユーリの頭から煙がプスプスと出ている。たしかにこれ以上の説明は無理だろう。
「・・・ケイタイとは持っているべきものなのか?」
「絶対に持たなきゃいけないってことはねえっスけど、まあ持ってた方が色々と便利っスね」
ユーリは一人頷くと、突如スッと立ち上がった。
「よし、私も手に入れるぞ。そのケイタイとやらを」
「ええっ!? だ、大丈夫っスか!?」
「ユーリ“超”が付くほどの機械音痴ジャン。携帯なんて使えるノ?」
「案ずるな。そこの馬鹿犬にも扱えるのだ。私が使えぬ訳がない」
心配する二人をよそに、ユーリは胸を張って答える。一体どこからその自信が来るのか。
「とか言って、ついこの前もトースター壊したし、おとといも買ったばっかのミキサーを数秒で台無しにしたし」
「ユーリがまともにいじれるのってマイクぐらいダヨネ」
ユーリに聞こえないようにこそこそと話し合うアッシュとスマイル。
「何か言ったかお前達?」
「「いーえ何も」」
キッとこちらを向いたユーリに、二人は声をそろえて答えた。
「まあいい。ところで、ケイタイはどこに行けば手に入るのだ?」
「電気屋さんが多いっスね。色々な会社のがありますし」
「よし、今からケイタイを買いに行くぞ。お前達、ついて来い」
「ええっ!? ちょ、そんなこれからっスか!?」
「当たり前だ。私の決定は絶対だ」
「あうっ・・・」
「アッシュ、諦めなって」
涙目になってがっくりと肩を落とすアッシュの背を気の毒そうに叩くスマイル。
「じゃあ、せめてお昼ご飯のあとにして下さいっス」
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