音楽の部屋2

□La nuit quand la lune est bleue
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シャルロットは気付くと、どこかの深い森の中にいた。
「あら? ここはどこでしょうか? 私はベッドの中にいたはずですのに」
小首を傾げながら周囲をキョロキョロと見回す。頭上には青い綺麗な月が浮かんでいる。ふと、少し先の方に光る何か小さな物が見えた。歩み寄って月明かりに照らして確認すると、それは金色の毬だった。
「まあ綺麗。誰のでしょうか?」
拾い上げると同時に、誰かがすすり泣く声が聞こえた。
「泣き声?」
すすり泣きの聞こえる方へ進んで行くと、そこにいたのはまだ幼い少年のようだった。夜の森の暗さで顔はよく見えなかったが、少なくとも夜の森に居るのには似つかわしくない。
「あの、どうなさいました?」
シャルロットの優しい問いかけに、少年はしゃくりあげながら答えだした。
「毬で、毬で、遊んでたら、森に、飛んでっちゃって、探しても、みっか、なくて・・・帰り道も、わかんないし・・・」
「毬? もしかして、これ、貴方のですか?」
先ほど拾った金色の毬を少年の前に差し出す。
「わあ! ありがとう!」
少年は嬉しそうに毬を受け取り、上着のポケットにしっかりと仕舞い込んだ。
「あの、よろしければ出口まで、私もご一緒させて頂いても構いませんか? 私も迷子なんです」
「うん! あの、僕も一人で心細かったんだ」
少年の少々照れ臭そうな声が聞こえ、小さな手が差し出された。
「手、繋いでいい?」
「はい、私でよろしければ」
自分より一回り小さな手を優しく握り、月明かりの差す方へと二人でゆっくりと歩き出す。
「ねえ、お姉ちゃんって何族? ホビット? ニンフ?」
「ほびっと? にんふ?」
聞いたことのない単語の連続に、シャルロットの頭上に疑問符が浮び出す。
「違う? うーん・・・あ、ひょっとして魔族? 僕も魔族なんだよ」
「まあ。私のお友達にも魔族の方がいらっしゃいます」
「そうなんだ! どんな人なの?」
「はい。とてもお優しくて、お強くて、凄く素敵な方なんですよ」
「へー、僕もそのお姉ちゃんのお友達に会ってみたいなぁ」
「ええ、きっと喜んで会って下さいますわ」
そうやって他愛もないおしゃべりをしながら歩いているうちに、森の出口らしき所が目前に見えた。
「あら? 出口かしら?」
「ああ! 本当だ! わぁいやっと出られるぞぉ!」
素直に喜ぶ少年の様に、シャルロットも思わず嬉しくなってしまう。
「そうだ! お姉ちゃんにこれあげるよ」
彼がシャルロットに手渡したのは、つやつやと光るドングリ。
「まあ、よろしいんですか?」
「うん。だって、お姉ちゃんが僕の毬を見つけてくれたし、お姉ちゃんが一緒にいてくれたから森を出れたんだよ。これはそのお礼」
「ありがとうございます」
「若様ー!!」
「あ、ソービだ! ソービー!!」
少年が駆けて行った途端に強風が吹き、シャルロットは思わず目を閉じた。
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