カオスの部屋

□寂し過ぎて
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「きゃあ! ハデス様」
「あれ? ペルセポネ?」
抱きしめたのがメンテーではなくペルセポネだったことにハデスはちょっと驚きました。
「ハデス様、どうしてこちらに?」
「あ、その、君に会いたくなって・・・」
「お仕事は?」
「え、え〜と、こ、これからというか、もうちょっとで・・・」
妻に問い正されたハデスはもごもごと口籠ってしまいました。
「・・・ハデス様」
ぺちっ
軽い音と共にハデスの頬に何かが当たりました。
「???」
「め、です」
ようやく頬を彼女に叩かれたのだと気付きました。
「お仕事をサボって、皆様にご迷惑をかけて、他の女の人を無理矢理攫おうとするなんて、そんなハデス様なんか私大嫌いです」
ペルセポネに怒られたハデスの目から涙が一筋、二筋・・・だーーーーーっ
「うわああああああああああ!! すまないペルセポネ〜〜〜!! 私が愛してるのは君だけだ〜〜〜!! 君がいない寂しさからつい!! もう浮気なんかしないし、仕事もサボらないから嫌いにならないでくれ〜〜〜!!」
愛妻に縋り付き、滝のような涙を流して泣きじゃくる冥王ハデス。
「(なにあれ? 本当にあれ冥府の王?)」
その情けない様に、草になったメンテーも呆れ果ててしまいます。
「寂しかったんですよね?」
「ああ!! 寂しくて、寂しくて〜〜〜!! 君に会えないのが辛くって〜〜〜!!」
「・・・よしよしです」
ペルセポネはハデスが落ち着くまで、ハデスの背中を優しく撫でてやります。
「でもハデス様、冬になったらハデス様のお傍に行きますから、それまでの我慢ですよ」
「我慢、する」
「お仕事もちゃんとして下さいね」
「ちゃんと、する」
「皆様方にご迷惑をかけたらいけませんよ」
「迷惑、かけない」
「お約束ですよ」
「約束、する」
ぐずぐずと半べそで妻に約束するハデス。本当に冥王の威厳ゼロです。
「私も一緒に参りますから、冥府に帰りましょう? ね?」
黙って頷いたハデスと手を繋ぎ、その場を立ち去るペルセポネ。
「(ふう、助かったわ。にしてもあたしってこのまま?)」
変な男に言い寄られ、攫われそうになった挙句、草に変えられそのまま忘れ去られる。メンテーは我が身の悲運に嘆息を吐きました。
しかし数時間後に戻ってきたペルセポネが無事に元に戻してくれたのでした。
メンテーが変身したこの草はのちに「ミント」と呼ばれるようになりました。
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