屋根裏部屋

□愛してるから
3ページ/10ページ

「・・・って、なんで着替えがこれなんだよ!」
ジョーカーから手渡されたシャルロットの着替えの服に、魔王は表情を引きつらせた。
彼の手中にあるものは彼のシャツだけで、それ以外の付属品は何もなかった。
文句を叩き付けようにも、それを持ってきた少年はすでにこの場におらず、ヴィルヘルムは一人苦々しい表情をするしかなかった。
あんの馬鹿! シャルロットにこんな格好させて、俺の理性が保てなくなっちまったらどうするんだよ!
「あのぉ、どうかなさったんですか?」
ジョーカーへの怒りに眉をしかめていたヴィルヘルムは、シャルロットの声で慌てて現実に戻ってきた。
「へ? あいや、ジョーカーの奴が持ってきた服なんだけどさ、これ」
手中の服を恐る恐る彼女に見せた。彼女のサファイアブルーの瞳が、真っ白なシャツをじっと見つめる。
「これ、ヴィルヘルム様のお洋服ですよね?」
「あ、ああ。ったくあいつ、何考えてんだかなぁ。こんなのよりもっとかわいらしい服とかあったろうが」
後頭部をポリポリと掻く魔王から、青い瞳を彼の手中のシャツへと移し、ひょいとシャツを受け取ったシャルロット。
「お借りして、構いませんか?」
「え? けど、こんなのでいいのか?」
「はい。以前お借りした時、とても着心地が良かったので」
ふわりとした少女の微笑みに、彼の胸の鼓動が高鳴った。
「あ、ああ、そう。じゃあ、外で待ってるから、着替え終わったら呼んでくれ」
「はぁい」
シャルロットを一人部屋に残し、ヴィルヘルムは外に出てドアに持たれかけた。
自分の服を、彼女は着心地が良かったと気に入ってくれてる。悪い気分ではなかった。
胸のときめきが、まだ治まらなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ