私の心は君の空

□第零訓 頼みごとは早めに片付けろ
1ページ/1ページ


紙袋に、いっぱいの林檎。


こんなに赤いのに、決して禍々しいわけでもなく、どれも日の光を浴びて発光している。


何個買ったんだっけかな。  



『あたし、林檎が食べたいな。真っ赤で、密たっぷりの』


いつも布団から出られずに、ずっと外ばかり眺めていたお姉さんの、頼みごと。


初めて私にした頼みごと。


もう長くは無い命。

きっとこれは、最初で最後の頼み。

あまり豊かではないけれど、今日は思い切ってお金を使った。



最後だなんて、言いたくない。

でも、最後だから。


最後くらい、大好きな林檎をおなかいっぱい食べさせてあげたいから。



待っててね。



あと、もうすぐで帰るから。


まだ、笑っていてね。



・・・・・お姉さん。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ