私の心は君の空
□第零訓 頼みごとは早めに片付けろ
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紙袋に、いっぱいの林檎。
こんなに赤いのに、決して禍々しいわけでもなく、どれも日の光を浴びて発光している。
何個買ったんだっけかな。
『あたし、林檎が食べたいな。真っ赤で、密たっぷりの』
いつも布団から出られずに、ずっと外ばかり眺めていたお姉さんの、頼みごと。
初めて私にした頼みごと。
もう長くは無い命。
きっとこれは、最初で最後の頼み。
あまり豊かではないけれど、今日は思い切ってお金を使った。
最後だなんて、言いたくない。
でも、最後だから。
最後くらい、大好きな林檎をおなかいっぱい食べさせてあげたいから。
待っててね。
あと、もうすぐで帰るから。
まだ、笑っていてね。
・・・・・お姉さん。